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ミートパイとワイン

 先に祭りへ来ていたムメイ達は既に品評会の会場へと到着していた。


 街で一番の祭りというだけあって他の街から来ていると思わしき人も見受けられ、関係者がその人達にパイと飲み物を勧めている。


「ようこそ! こちらのミートパイとワインはいかかですか? お酒が飲めない方には葡萄ジュースも用意しています」

「シス、絶対に食べるな。そのミートパイには玉ねぎが使用されている」

「っ!」


 勧められるままに手を伸ばしかけていたシスの手がビタっと止まった。


「あの……?」

「この者は玉ねぎを食べる事が出来ないのだ、葡萄もな。好き嫌いではなくそういう体質だ、だからこの場で出される物は何も口にできん」

「まあ、それは残念ですね。では貴方は如何ですか?」

「そうしたいところだが、体質上一切の飲食を出来ない者がいるのを知っていながらそれらを気にする事なく食する程私の神経は図太くないので遠慮する」

「え、えっと……そうですか。では貴女は……あら」


 ムメイの方を向いた女性は一度動きが止まったが、またすぐ笑顔に戻りパイとワインを勧めてきた。


「奴隷の方ですね。今日は身分関係なく誰でもパイとワインが食べられますよ、さあどうぞ」

「……周りが食べていないのに私だけが食べるのも気が引くからやめておくわ」

「別に飲み食いしなくてはいけないわけではないのだろう? ならば行くぞ」

「ああ、分かった」

「それじゃあね」


 全員から断られ何の反応も返せなくなった女性を置いて、ムメイ達は会場の奥へと進んで行った。


 ******


「……あのパイ、ニンニクが使われていたから断るのにシスを使った?」

「まあな、だが実際飲食出来ない者がいると知っていて食事をする気にならんのも事実。食事は全員で取るものだ、でないと味も落ちる」

「ニンニクって……大丈夫なのか?」


 つい先日ニンニクの匂いに当てられ体調を崩していたのを知ってシスは心配しているが、当のヴィルモントはピンピンしている。


「問題ない。祭りで人に振る舞うだけあってニンニクは隠し味に使われているだけだ、匂いも感じない程のものならば体調を崩すような事にはならん。だからといって口にはせんし、する気も起きんが」

「……それならゼビウスの分を貰ってきてもいいか? まだ宿で寝てるだろうし、何か食べた方が早く元気になると思うんだ」

「…………。今貰ってもしばらくは戻らんから形が崩れて冷めるだろう、パイとワインは夜でも配られているから戻るときに貰えばいい。その方が形も保たれるし温かいまま渡せる」

「確かに。ならそうするか」

「……」


 最もらしい事を言ってはいるが、先程からヴィルモントはさり気なくローブで鼻を覆っているのにムメイは気づいた。


 やはりニンニクの匂いが気になるらしい。


「あー、違う場所に移動する?」

「いや、せっかくの品評会。丁度品評会に出せるワインを持っていて、誰でも参加可能と聞いて参加しない理由がない。行くぞ」

「あ、うん」

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