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ダルマの子供

 歴史の話が別の意味で盛り上がり収集がつかなくなっていたが、四大貴族が揃った事を察知したダルマが話を無理矢理終わらせそのまま全員を巻き込み城へ向かった。


 城に入り執事が戸惑いながらも案内した部屋は食堂のようで、三人の男性が奥のテーブルの前に立ち何か話し合っている。


 ダルマは四大貴族が揃ったと言っていたが前方にいるのは三十代程の黒髪の男性と少しくすんだ金髪の車椅子の老人、そして恐らくヴィルモントであろう銀髪の若い男性の三人だけで最初に出会ったドルドラの姿が見えない。


「うわ、もう来た。……」

「ドルドラの言う通りだね。しかしまさか私達が揃った瞬間に来るとは……」


 両側にいる黒髪と金髪の男性がこちらの存在に気づくのと、ダルマが暫定ヴィルモントの姿に目を輝かせ叫んだのはほぼ同時だった。


「ほら見ろほれ見ろ見るがよい! あそこにいるヴィルモントはどう見ても妾の子供であるヴィルモントじゃ! 子供を探し続けて何千年! いや万かもしれんしもしかしたら億かもしれんがとにかく! ついに妾は念願の我が子を見つけたぞ! ヴィルモント!!」


 興奮し早口でまくしたてながらヴィルモントの元へと突進する勢いで駆け寄ったダルマだったが、後数メートルという所でいきなり全身氷漬けになり固まった。


「ドルドラから話は聞いていたがこれが私の母親だと? 見た目はともかくとても信じられんな」

「そうかい? 私はこの一瞬で間違いなくヴィルモントの母親と思ったがね」

「俺もだ。あのテンションの高さと早口はヴィルモントにそっくりだ」

「ふふん、そうじゃろうそうじゃろう! 何せ妾とヴィルモントは親子じゃからな! 姿だけでなく言動が似るのも当然の事!」


 凍りついた筈のダルマだが、耐性があるのかただ頑丈なだけなのかあっさり氷漬けから戻り今度こそヴィルモントを抱きしめようとしたところで再び氷漬けになった。


「ヴィルモント、恐らくキリがないからとりあえず話を聞いてはどうだ。心当たりがないわけじゃないんだろう」

「分かっている。分かってはいるのだが……どうもこいつのテンションと勢いが生理的に受けつかん」

「そうか、俺達も大体いつもそんな感じだ。特に徹夜明けのお前はな」


 ダルマと、というより四大貴族だけで話は進んでいるみたいだがトクメは特に気にする様子もなく四大貴族のものであろう過去を引き出し、ゼビウスと一緒にその本を読んでいた。

 普段ならばこのように放置されると問答無用で割り込み話に入ってくるのだが、ダルマが関わっているからか全く興味を示していない。


 ムメイもやる事がないのでとりあえずドルドラの姿を探そうと軽く辺りを見回すと、テーブルの後ろの隅に何かあるのを見つけた。


「え、うわ……」

「ムメイ? 何かあったのか?」

「いや、あれ……」


 ムメイが指した方向をシスも見るとそこには板の上で後ろ手に縛られ正座しているドルドラがいた。

 よく見るとその板はただの板ではなく鋭い三角形の木が並べられている。


 それだけでも十分痛そうなのだが、更に脚の上には分厚い氷の板が二枚乗せられている。


「そこのバカは気にしなくていい、いないものと見なせ」


 そこに氷のように冷たい声と表情をしたヴィルモントが声をかけてきた。

 ダルマはまだ氷漬けになっている。


「そいつはそこの銀髪の男と私を間違えて声をかけたそうだがな、身長服装だけでなく髪型も長さも違うのに何故間違える。お前は髪の色でしか人を判別出来んのか? 髪しか見えない節穴ならばそんな目玉は抉り取ってしまえ」

「う、い、いやまさか銀髪が他にいるとは思わなかったから思わず……」

「思わず? それで間違えただけならともかく私が日光を浴びると灰になるのを叫ぶ必要はあったか? しかも大声で」

「そっ、それは確かに悪かったと思っている!」

「思っているだけではこの状況は何も変わらん、むしろ悪化しかない。反省しているのならこの状況を収める為に動けと言いたいがお前のような能無し脳筋単細胞には何も出来んだろう、出来るのならそもそもこんな事態を引き起こしたりしないからな。むしろ余計な事をして更なる悪化を招く事しかしないと断言出来る」

「う、うぐ……」

「……会話が出来るという事は余裕があるという事だな。もう一枚、いや二枚板を追加するか」

「ちょっ、お、ぐうぅ……!」


 ヴィルモントが言い終わると同時に、ドルドラの脚の上に最初に乗っていた板よりも分厚い氷が二枚追加された。


 話しかけられたのは最初の一言だけで、またすぐに放置され二人の会話を眺めていたムメイだったがヴィルモントの銀髪に金色が混じり始めた事に気づき声をかけようとした時、少し離れた所からパン、パンと手を叩く音が聞こえた。


 そちらを見ればどうやら手を叩いたのは車椅子の男性のようで苦笑いを浮かべている。


「ヴィルモント、少し落ち着こうか。せっかく客人を呼んだというのに何もせずに放置するなんて失礼にも程があるだろう、まずはお互いの自己紹介が先だ。その後に順番に話を進めて行こうじゃないか」

「……それもそうだな、失礼をした。まだ準備が出来ていないがとりあえず席へ案内しよう。使いを出す前に来たのはそちら……いや、そこの氷像が半ば無理矢理連れて来たのか。ならばお前達は普通に歓迎しよう」

「う、うん……」


 先程の早口から一転して落ち着いた様子で丁寧な仕草で頭を下げるヴィルモントの髪は何の色も混じっていない銀色しかなく、ムメイは疑問に思いながらも謎の勢いに呑まれ素直に従った。


「た、助かった……礼を言うぞローラント」

「君を助けたわけじゃない。ドルドラはもう少しそのまま反省していてもらおうか」

「え゛っ」

「いや、そろそろ降ろしてやってもいいだろう」

「クラウス……!」

「石抱きは降ろした後も苦痛が強い。特に脚に食い込んだ角材の突起部分から離れる時と、その後痺れた脚に血行が回復していく時がな。触るだけでも苦痛に呻き、蹴飛ばせば大の男でも涙が流れる程だ」

「それはいい事を聞いた、よし採用。一時間毎に繰り返すとしよう」


 ヴィルモントだけがドルドラに対して怒っているようだったが、どうやらヴィルモントだけでなく他の四大貴族もドルドラに対して非常に怒っているようだった。

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