友人
椅子に座って、天井を見ていると一本の電話がかかってきた。
携帯の画面を見ると、旧知の間柄の友人の健だった。
「やっちゃたね、重ちゃん」
友人の軽口を聞き、携帯を切る。
そして、またなる。
つながるまで、かかるだろう。観念して電話にでる。
「なんだ」
「いやぁ~元気かな~って」
「問題ない」
「嘘だ~、世界中から責められているのに~」
私は今、自分の失言によって世界中から叩かれている。
「どうせ、すぐにおさまる」
「俺みたいに仕事辞めないの?」
健は50歳で仕事を辞め、悠々自適の生活を送っている。
私と健は今年で80歳だ。
「俺は生涯仕事したいんだよ」
「俺は会議に出るよりも、温泉につかりたいけどな~」
その言葉に納得しかける。
「誰かに何か言われてかけたのか?」
「・・・・・・・・そんなことないよ」
「今の間は何だよ」
「重ちゃんが心配になったから、電話したんだよ」
「もう切るぞ」
「無理しちゃダメだよ、重ちゃん」
「わかったよ、健ちゃん」
電話を切ると、心のわだかまりが消えた気がする。
そして、私は部下に電話をかけた。