第5話 これは俺の物語だ D.C.
アレイヤにとってリアーナは家族だった。
全てから見捨てられた少年は初めてできた姉のような存在を親しく思い、彼女を存在しない家族の代わりにしていた。
だからこそ彼女が嫌がるようなことを進んでしようとは思わない。
人間嫌いな彼女を振り切ってでも自分の望みに走る事は、今までひとりぼっちだった自分の横にいてくれた事への冒涜であるとさえ思っていた。
教会に売られてからも共にいて、ずっとこれからも横にいるのだと思っていた彼女は今日この時をもっていなくなった。
枕元に残された手紙を握りしめて、アレイヤは久方ぶりの誰もいない独りぼっちの中で涙を流す。
「………………ばかやろう」
こぼれ落ちる涙を隠すように拭って、手紙を掴む力が強くなる。
彼女を止める方法はいくらでもあった。
いなくなる時に「やめろ」と一言言うだけで、リアーナは諦めただろう。
『私がいないとすぐに死ぬでしょう』といって、いつものように歳上ぶる。
そうしてまたいつも通り二人になる。それでよかったのかもしれない。
だがそれはリアーナの覚悟を踏み躙る行為になってしまうことをアレイヤは理解している。
あの場で一番辛かったのは誰だ。
家族がいなくなるアレイヤか、違うだろう。
愛するものの幸せのために自ら去る覚悟をしたリアーナの方が何倍も辛い。
だから起きているのに寝ているふりをした。
彼女の決心のために、そして面と向かって話してしまえばアレイヤは別れることができない。泣きついてでも止めてしまう自信のようなものがあった。
彼女の覚悟のために『出来の悪い弟』はそのまま別れた。
いつかまた言えることを信じて、彼女の望んだアレイヤの未来のために。
だから今だけは、泣いても許されるだろう。
「うっううぁああああああああああ」
ーーさようなら、そして俺は生きるよ。
ーーいつかまた会った時に誇れるように思い出を作る。
ーーそれまでは少しのお別れだ。
そうだろう、リアーナ。
短いのはしょうがない
こうじゃないと嫌