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「勝者はアレン!!」


鳴り響く歓声。その歓声によって引き起こされる地響き。

そのすべてが俺という存在を亡き者にする。

いっそのこと、亡き者にしてもらったほうがいいのかもしれない。


だが、世界というものはそんなにあまいものではないようで、そうは簡単に問屋を卸ろしてくれないいらしい。


「あれれ。あの《《グランロード》》家の血を引き継ぐ君がこんなに弱いはずないよねぇ」


奴はそのきざったらしい顔に笑みを浮かべながら俺にそう語りかけてくる。


「あ、ごめんごめん。傷つけちゃったかな?でも仕方ないよね。君が弱いんだから」


その憎たらしい顔をいますぐにでも殴ってやりたいがその願いが叶うことはない。


理由?


そんなのは至極簡単。


ただ、俺にあいつの顔を殴るだけの実力がないからだ。


アレン・ストライク


この憎たらしい顔の持ち主の名前だ。ストライク家は代々剣聖の血を引き継いでいて、剣の腕に関することなら奴の右に出る者はいない。


みんな剣聖と聞いてどのようなことをイメージするだろうか。


イケメン?容姿端麗?文武両道?はかには何だろうか。


だが、答えは簡単。


クズである。


いや、この回答では語弊を招いてしまうかもしれない。実際のところは、


生きてる価値のないゴミである。


あれは人の皮をかぶった化け物だ。女に対しては本で書かれているような王子様を演じ、自分より下だとわかった者には、それはそれは悪徳業者もびっくりの、下卑た本能を見せる。


こんな奴は早く死んでくれたほうが世界のためになると思うのは俺だけではないはずだ。


話は戻るが、今はスタンウェイ高等学校の剣舞祭である。


1年に1回、校内の生徒でトーナメント制の試合を行う。この順位によって成績も大きく変わる生徒にとって重要な行事なのである。


ただし、重要なのは生徒に限ったことではない。


この剣舞祭は学外から多くの人が見に来る一種の祭りのようなものである。


国に暮らしているものはもちろん、国のお偉いさんも将来の兵士のために視察に来ることも少なくない。


まとめると、ここでいい成績を収めることはメリットに他ならないということだ。


そして、俺の成績は2位。


成績だけを見れば優秀であることは明らかである。


ただ、俺はアレンに決勝戦であっけなく負けてしまった。そのことが俺に重責を伴わせる。


せめて、レイ・グランロードが一般市民ならよかったのに。


《《グランロード》》家が《《英雄》》を代々受け継ぐ血筋でなければよかったのに。




俺がこの世界で目を覚ましたのは16年前。


若くして病気で亡くなる直前に俺はにいるはずもない神に願った。


どうか健康な体で生まれ変わりたい、そして普通の人生を歩みたい、と。


そして目が覚めると、見慣れない天井が目の前にあった。あたりを見回そうにも顔が動かない。いったいどうなってるんだと起き上がろうとするも体に力が入らない。


これが死後の世界か、と思っていると急に周りが騒がしくなった。


「@:.]@:\/@/\@://^^09\」


「7\78@//:4@o@:ioi@\y\u:ui@t\\」


金髪碧眼の美男美女が俺に向かって何かを叫んでいる。髪の長い美女の方は涙を流して喜んでいるように思える。そして、一般人の俺から見てもイケメンと言わざるを得ない男性は隣にいる美女の方に寄り添って涙ぐんでいるかのように思える。しかし俺は自分の置かれている状況すら定かになっていないので、何を言ってるんだこいつらは、と思っていたが、それから数か月が経ち、色々と自分の状況がつかめてきた。


どうやら、俺は最近流行りの異世界転生をしてしまったらしい。


初めに意味の分からない単語を言っていたのがこの世界での俺の両親にあたる、グレイ・グランロードとシルキー・グランロード。


父であるグレイは若くして英雄の名を欲しいがままにするほどの実力者で現在この世界における人間のなかでトップ3に入るほどの腕前らしい。

なんでも俺が生まれる前には魔王を倒すメンバーの一員だったらしくあらゆる面ですさまじい功績をたたき出したらしい。S級の魔物を何体も倒したり、殺人などを犯した犯罪者を討伐したりするのに一役買ったことが何回もあるらしい。


母であるシルキーは端的に言えばスタンウェイ王国の聖女という位置づけらしい。聖女というのは神聖魔法を極めたものに贈る称号で一つの国に一人いれば十分といわれるほど珍しく、人びとに崇拝される存在なのである。


そんな二人が出会ったのは魔王討伐メンバーに選ばれたからだそうで、冒険が進むに連れて二人の仲もどんどん親しくなっていき、魔王を討伐したときにグレイがシルキーに結婚を申し込んだらしい。


我が親の馴れ初めを語るのは子供にとって苦しいがここは我慢して話すとしよう。


そんなこんなで生まれたのがレイ・グランロードであり氷雨 零である。

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