表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/63

08

 


 小テストは週明けの月曜日に行われる。今日は金曜日だ。


「いいか、麻倉。小テストは、数学・現国・英語の3教科だ。範囲が狭まられている分、対策はしやすいが──」


 しかし、どんな勉強も積み重ねだからなぁ。

 とくに数学なんか、小中で習った内容が下地になってくるし。


「とにかく、放課後までに勉強計画を立てておくから」


「わかりました! 戸山さんがいてくれれば、十人並みですよ!」


「十人並み?……ああ、百人力と言いたかったのか」


 先行きが不安すぎる。


 ▽▽▽


 授業を受けつつ、同時進行で麻倉の勉強計画を作成。

 さっそく昼休みから、家庭教師を開始しよう。


 ところが肝心の昼休みに、麻倉が見つからない。

 麻倉のクラスにも、学食にも、昼だけ解放している屋上にもいない。


「まさか逃げたか?」


 と思ったら、校内放送で麻倉の元気な声が聞こえてきた。

 放送部だったのか……よりにもよって今日が当番とは。これで昼休みは潰れてしまった。


 気を取り直して、放課後。

 麻倉のクラスまで迎えに行く。


 すると用のない女子生徒が出てきた。


「げっ、戸山俊哉! こんなところで何しているのよ? さては、アタシが目当てね」


 鴨下瑞奈だ。

 こいつ、麻倉と同じクラスだったのか。あまりに興味がないので知らなかった。


「お前に用はない」


 教室内にいた麻倉も俺に気づき、鞄を持って駆けてきた。


「戸山さん!」


「あら、麻倉さん。戸山俊哉と知り合いなの?」


 鴨下瑞奈は、なぜ俺をフルネーム読みするのか。


「はいっ! わたしの家庭教師になってくださいました!」


「ふーん、家庭教師ねぇ。戸山、余裕じゃない。次の期末テストの勝負、忘れてないでしょうね?」


「勝負? お前と勝負する予定なんかあったか?」


「昨日の放課後のことよ! もう忘れちゃったの!?」


「まぁ、どうでもいいことだからな。さ、行くぞ麻倉」


「はぁ。あの鴨下さんが怒りでふるえていますけど?」


「ふるわせておけ。それより、どこで勉強するかな。自習室だと邪魔が入る可能性もあるし──」


 今朝の小内のようにな。


「図書館か、カフェか……」


「わたしのお家は、どうでしょうか?」


「……え、麻倉の家に? 親御さんは許してくれるのか?」


「はいっ。実は今日から週明けまで、両親ともいないんです。パパは出張、ママは旅行でして」


「じゃあ麻倉一人で? 危なくないのか?」


 女子高生で独り暮らしもいるが、麻倉は理事長の娘だからな。

 つまり、金持ちの娘だからな。


「いえ、一人じゃないですよ。メイドさんがいます」


「メイド……だと。さすがだな麻倉。俺は初めてお前を見直した」


「あの、見直すポイント、おかしくないですか?」


「それはそうと、俺は決めた。お前の家に行こう」


 麻倉がテンションを上げる。


「はいっ。お勉強会ですね。なんかワクワクします」


「ついでに泊まり込みだ」


「はいっ。泊まり込みでお勉強会ですね。なんかワクワク──えっ?」


 西成、山白、小内、有本の四人のうち、いちばん成績がいいのは小内だ。


 というのも、小内は数学が得意(得意といっても、ギリで平均点レベルだが)。

 勝負する小テストには数学もあるので、小内はそこで得点を稼ぐだろう。


 麻倉を勝利させるためには、週末、みっちりと勉強を教える必要がある。


「お前のご両親がいないのは好都合だ。週末は朝から晩まで勉強漬けだぞ。『許して』とか『助けて』とか言っても、解放してやらん。勉強のしすぎでヒイヒイ言う覚悟はできたか!」


 麻倉は顔を真っ赤にして、今にも倒れそうな様子だ。


「……お泊り……朝から晩まで……ヒイヒイ……はわわ」


 睡眠と食事の時間はちゃんと確保するとして──土日で28時間は勉強に充てられるかな。

 しかし、それで足りるかどうか。


「ところで麻倉の家って、どこなんだ?」


「は、はい、ご案内します!」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 続きが楽しみです。 麻倉ちゃんは二人っきりになると勉強捗るのだろうか。 とんでもないところを更に見せてくれて、戸山のストレスになりそうですがー 小内さんは理由はともあれ、戸山の有用性を認…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ