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監禁から解放されたら、まず何をするか?
トイレでしょうが。
すっきりしたところで、水元の再試験だ。
麻倉が腕組みして、水元に言う。
「さぁ美園。戸山さんにどこまで教えてもらったのか、わたしが見届けてあげますよ」
なぜか偉そうな麻倉彩葉。最近、鴨下に鍛えられて性格まで変わってしまったのでは? 素直な麻倉はどこにいった?
「麻倉、戻ってこーい」
おれが両肩をつかんで揺すぶったら、麻倉は目を潤ませて、
「わぁ、なんですか戸山さん! わたしはここにいますよ! わたしはどこにも行ってません!」
小内がお茶を飲みながら冷ややかに言う。
「なにこの茶番」
さっそく水元は、鴨下が用意した模擬試験をはじめた。
今回の模擬試験を用意するのが鴨下なのは分かっていた。
家庭教師したおれが準備しては、不正の疑いが出てくるからな(水元がまた及第点を取れなかったら、監禁部屋に逆戻りなので)
しかしだからこそ、対策済みだ。
鴨下がどのような問題を用意するか、先読みしておいたのだ。これは鴨下の性格からだいたい読める。
テスト範囲の推測なので、不正でもない。まぁ本来なら、ヤマカンをはるのと五十歩百歩なので、あまり褒められたことではないが。しかし、今回ばかりは特例ということで。
水元が模擬試験を受けているあいだ、おれは小内に目で合図。
それから台所まで移動したら、小内もついてきた。
「潜入作戦の首尾はどうだ?」
朝水の不正を暴くため、小内が潜入する予定だったんだが──学期末テスト前の勉強会に、小内がこうしてやって来たとなると──
「失敗した」
だと思った。
小内が潜入に成功するためには、頭を下げる必要があったわけで。
プライドの高い小内には、無理ゲーかなぁとは思っていたんだが。
こうなると、麻倉が生徒会長になるしか道はなくなった。
みんなのところに戻ると、水元はテストを終えたようで、鴨下が採点中。
麻倉が労っていた。
「美園、よくやったのです。どんな結果になろうとも、わたしは美園のことを誇りに思いますよ。そうです。すべては美園をより成長させるためだったのです」
涙ぐむ水元。
「お嬢さま! 私は理解していました。すべては私を思ってのことだということを」
いや、水元。そのお嬢さまは、さっきまでお前を監禁していたお嬢さまだからな。
鴨下の採点が終了。
「すごいわ、水元さん。一気に学力を上げてきたわね」
及第点を取ったのか?
水元とハイタッチでもしようかと思ったが──
「及第点まで、あと一歩だったわ。山登りにたとえると、山頂を前にして息絶えた感じ」
……ダメじゃん。
麻倉は慈しみの笑み。
「さぁ美園、戸山さんとともにもう一度、地下に降りてください」
「えー」
この不満の声は、おれ。
監禁部屋へ逆戻り。
その後、再々試験で水元は及第点を取った。
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