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 どこでもいいというので──

 科学博物館に来たところ、麻倉が『正気ですか』という顔をした。


 安心しろ、俺は正気だ。


「それでは、デート楽しかったです」


「いやいや帰ろうとするな。デートの本番はこれからだぞ」


「あのですね、戸山さん。私が求めていたのは、たとえばニューファンタジーランドですよ」


「放課後に気安く行ける場所じゃないだろ」


「私の美女と野獣への期待を返してください!」


「あのな、麻倉。俺がお前に伝えたいことは、学ぶことの楽しさだ。そのために、この科学博物館に来たのだ」


「学ぶことの楽しさ、ですか。さては、これから何か深いことを言う前振りですね」


「えーと、もう言ったんだけど、深いこと」


「あ、終わりですか」


「はい」


 というわけで、科学博物館内を見てまわる。

 興味深い展示が多い中で──


「あれ。前来たときは月の石が展示していたんだけどな。終わっちゃったのかな」


「戸山さん、戸山さん。あんなのはただの石ですよ」


 俺からの非難の眼差しを受けて、麻倉が弱る。


「そんな目で見ないでくださいよ」


「あのな。ただの石というのは、そこらへんに落ちている石だ。月面に落ちていた石は、ただの石じゃぁない。人類の科学技術の勝利を示す石であり──」


「ティラノサウルスの骨、見にいきましょう」


「だな」


 ティラノサウルスの偉容を眺めていたら、唐突に麻倉が言った。


「恐竜さんの時代は、地球の重力が今よりも軽かったんですよね?」


「またそんなトンでも理論を」


「え、何を言うんですか、戸山さん。ブラキオサウルスみたいな図体の大きい恐竜が、いまの地球の重力で歩き回れたはずがありませんよ。ゴジラじゃないんですよ」


「あのなぁ。重力が変わるって、とんでもないことだからな。地球物理学的にいっても超大事件だ。必ずや痕跡を残しているのに、しかし誰もそんな発見はしていない」


「ならどうしてブラキオさんは歩き回れたんですか。あんな高いところに頭部があって、血は回っていたんですか」


「実際に歩きまわっていたんだから、生物学的にOKだったんだよ」


「じゃあどうして、今はあんな大きな動物がいないんですか」


「はぁ?」


「いいですか。現生する最大の陸棲動物はアフリカゾウさんですよね」


「ああ」


「しかしブラキオさんに比べれば、アフリカゾウさんなどチビです。ウッカリ踏んづけてしまって、あっいたんですか、という感じです」


「いや、そこまでじゃないだろ」


「とにかくですね、なぜ今はもうブラキオさんクラスの陸棲動物がいなくなったのか。これはもう重力が重くなったから、としか考えられないのです」


「それは恐竜と哺乳類との違いだろ。哺乳類の場合、陸棲でいけるところまでいったら、アフリカゾウだったわけで──」


 あれ。だけど絶滅したのも含めれば、哺乳類最大はパラケラテリウムとかいう奴だったか。

 確かアフリカゾウよりも一回りは大きかったはず。

 つまり陸棲の哺乳類も小さくなっているのか。別に重力は関係ないだろうけど。

 なんでだろ。進化論的な理由だろうか。


「それはそうと、戸山さん。ビッグフットは実在しますよね?」


「……いませんよ」




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