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 放課後。


 麻倉の家にて。


 俺が、鴨下が新たな家庭教師になると告げたとたん、麻倉は凍り付いた。


「そんな……戸山さんじゃなくなっちゃうんですか。そんなの嫌です。戸山さんがいいです」


 そうか。そんなに俺を慕っていたのか。


「チョロかった戸山さんがいいんですよっ! サボれた戸山さんがっ!」


「おい本音がだだ漏れだぞ。それに俺はチョロくない。かつては地獄の勉強会をやっただろ」


「最近の戸山さんは牙を抜かれた感じでしたからね」


「く……否定できん。しかし、だからこそ鴨下を雇うことにしたんだ。安心しろ。俺も家庭教師を辞めるわけじゃない。いうなれば総監督の座に収まる感じだな」


「総監督は美園かと思っていました」


「まぁ、それは否定できないが」


 改めて、鴨下を紹介。


「麻倉、彼女が鴨下瑞奈だ」


「知ってますよ、戸山さん。お見舞いに行った仲ですし」


「形式的なことを気にしたんだよ」


 鴨下はさっそく問題集の束を、麻倉の目の前に積み上げた。


「家庭教師をやると決めたからには、麻倉さん。あなたを学年30位以内まで入れてみせるわ」


 麻倉の顔が青ざめた。


「鬼の気配がします。鬼が来ました」


 俺はまだ話すべきことがあった。

 こほんと咳払いしてから、


「実は、もう一人仲間が増えた」


「友達が増えるのは大歓迎です」


 心が広い麻倉に対して、『総監督』の水元は正反対の反応を示した。


「仲間の種類にもよりますが。こらちにいらっしゃっているのですか?」


「いやぁ、とりあえず今日は来ないって。小内礼なんだけども。さ、勉強開始だ」


 話を逸らそうとするときって、基本的に失敗するものだ。今回も。


「小内礼を仲間に加えたと? お嬢様の敵である彼女を?」


「それは違うぞ。今や小内も同じ船に乗っている。敵は朝水陽介ただ独り。それに朝水には有本や山白といった手駒があるんだ。こっちだって、仲間は多いに越したことはない」


「その手駒が役に立つかは、甚だ疑問ですが」


 学年末テストについては、その通りだろう。


 重要なのは、来学年の生徒会選挙。


 麻倉が生徒会長になるためには、選挙に勝たねばならない。


 つまり、票取りゲームで、だ。


 そのさいには、裏工作も必要となってくるだろう。

 有本や山白は、その手の工作にも長けているはずだ。そもそも人脈もあるしな、リア充パーティだけのことはあって。


 対等にやり合えるとしたら、それは小内を措いて他にはいない。


 俺と水元が話し合っている間に、鴨下は麻倉に小テストを受けさせていた。


 さっそく採点するも、鴨下は呻いた。


「なるほど。これは本当に、あたしが鬼になるしかないようね」


 ……そんなに酷かったのか。

 これでも、だいぶマシになったんだけどな。


 鴨下の壮絶な表情を見て、麻倉がビビった。


 で、俺にしがみ付いてきた。


「戸山さん、お助け!」


「観念しろ、麻倉。これも全ては、お前の将来のためだ」




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