表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/63

52





 3学期に入った。


 昇降口で、久しぶりに鴨下瑞奈を発見。


「あ、俊哉!」


「おはよーさん。しかしなぜ、そんなに驚く」


 鴨下は右手に持っていた紙袋を突き付けてきた。


「これ、山梨のお土産よ! だけど俊哉のために買ってきたんじゃないんだからね!」


「俺のためじゃないお土産ってなんだ」


 初日は始業式だけで終了。


 さっそく帰宅しようとしている麻倉を見つけ、その襟首をつかまえる。


「どこへ行こうとしているんだ、麻倉?」


 すると麻倉はいい笑顔で、


「今更ながらNetflixに加入したので、ストレンジャー・シングスをイッキ見するんですよ」


「それは夜しろ。これから図書館に行って、勉強会だぞ」


「ええっ! 戸山さん、3学期初日から勉強会って鬼ですか!」


「鬼じゃない家庭教師だ。お前、朝水の口車にのって、下らん賭けに乗りやがったろ。生徒会長になったほうが勝ちだとか、またバカなことを」


 たかが生徒同士の勝負も、背景を見ると冗談では済まない。

 麻倉家と朝水家による、権力争い。そこに直結するかもしれないのだ。


 ましてや、朝水にとって箔日学園は完全アウェー。

 そんな場所で、麻倉に圧勝したとしたら? 


 麻倉はそんなことまで考えてないのだろうが──そもそも家業を継ぐ気もないし。

 だが朝水は、将来のことを見据えて、この勝負を仕掛けてきたのだろう。


 本来なら水元が麻倉を止めるべきだったのだが。いや朝水の不正を止めるため、麻倉は勝負を降りようとはしなかっただろうし。


 朝水がそこまで読んでいたとすると、なかなか小癪な野郎。


「戸山さん、何かいろいろと悩んでいるようですね? 難しい顔しているから分かりますよ。しかし戸山さん、そういうときは脳内をリセットしたほうが良いのです」


「お前なぁ、誰のために悩んでいると思っているんだ」


「今日は頭を休ませる日として、うちのAndroid TV でストレンジャー・シングス、一緒にイッキ見しましょう」


 これは悪魔の誘惑だ。

 すなわち、すべての受験生がこのような誘惑と戦っているわけで──。


 まぁせっかくなので、今日は誘惑に屈することにした。


 3時間後。

 麻倉家の居間でくつろいでいると、水元が出現。

 足音も立てずに近づいてくるので、ほんと『出現』というキーワードがピッタリな奴。


「戸山さま。一つご指摘してもよろしいでしょうか?」


「いいよ、なんなりと」


「批判するわけではありませんが。ここ最近、お嬢様の家庭教師というよりも、ただの友達と化しているのではありませんか?」


 ギクリ。


「……本当に、そう思う?」


「はい」


「……」


 だとしたら、おれはもう家庭教師を続けるのは難しいかもしれん。

 家庭教師と友達の線引きは明確にしないといけないのに、いつのまにか薄れてしまっていたのか。


「どうしたらいいだろうな?」


「改めて家庭教師を雇用するというのはいかがでしょうか? もちろん費用はこちらで出します。そして戸山さまは、新たな家庭教師を監督する立場となるのです。ですが、それは信用の置ける人物でなければなりません」


「信用できる人物か。なら一人、当てはあるが」



気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。


すでにブクマ・評価してくださった方、ありがとうございます! 励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ