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小内の家にいるのを有本亜美に知られるのは、何か嫌だな。
ところが小内は別の考えらしい。
「ちょうどいいや、戸山。ココにいて」
「有本亜美が来るのにか?」
俺の確認作業がウザかったらしく、小内は苛立たしそうに言う。
「それこそ、ちょうどいいと言っているじゃん」
何か企んでいるのか。
有本どものグループから追放された身としては、あまりいい気はしない。
だが小内も今は、ハブられの身だしな。
そこいくと俺は麻倉とか水元とかと、新たな交友関係ができている。
などと考えいていたら、本当に有本が来やがった。
「うわっ、どーして戸山がここにいんの?」
第一声がこれ。
さて、俺はなんと答えればいいのか。
『小内礼の家庭教師をやっている──嫌々ながら』が唯一の回答だが。
チラッと小内を見る。
小内は家庭教師の件を隠していたいかもしれず、ならば俺はヘタなことは言わない方がいいか。
なんで小内に気なんか遣わなきゃならないのか、自分でも腹立つが。
ところが小内は小内で、予想の斜め上の返答。
「戸山とは、また友達に戻ったから。友達を家に招くのは、変なことじゃないでしょ」
なるほど。
小内としても、これは苦肉の策か。
つまり、だ。
惨めなボッチと、かつて追放した同級生と今は仲良し。
どっちがマシか天秤にかけて、後者を選んだわけ。
有本は小ばかにしたように返した。
「へえ。まぁアタシはもう、戸山先生に用はないけどね」
『先生』の箇所に、これでもかと皮肉をこめてきた有本。
俺も、お前なんぞに『先生』呼ばわりされたら虫唾が走る。
ただ、引っかかる発言ではある。
つまり家庭教師はもう用がないと。
そんな強気な発言の有本は、確かに納得のテスト結果だった。
だが、そこがおかしいな。
猛勉強しても、いきなりそんな良い点数は取れないはず。
そもそも猛勉強ができないから、赤点取るのが『好き』だったわけだし。
もちろん、この『好き』は皮肉。
小内は何やら考え込んでいたが、ふいに言った。
「で、亜美。わざわざ何の用?」
有本は邪魔そうに俺を見やる。
「2人だけで話したいんだけど」
「いいよ。戸山、1階に行ってて」
「了解」
俺は大人しく退出して、1階に降りた。
無人のリビングで、椅子に座る。階段を下りながら取り出したスマホを、耳にあてて。
スマホは、すでに通話状態。
どういうことかというと、すべて小内の計らいだ。
時間は少し戻って、有本がインターフォンを鳴らしたとき──
まず小内は、俺のスマホに電話をかけた。
続いてスピーカー通話にしてから、自身のスマホをポケットに入れた。
それから、有本を部屋に上げたわけだ。
よってスマホで、小内と有本の会話は筒抜け。
盗み聞きなんかしたくなかったが、小内がどうしても会話を聞けという。
なんでも、有本たちが期末テストで良い点数を取れたカラクリが、解けるそうだ。
そういうならば。
俺はスマホに耳をすました。




