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小内礼の家庭教師をやることになったので、麻倉に伝えることにした。
時差を考え、その日遅くに電話することにする。
メキシコでは朝飯のころだろう。
『あ、戸山さん。どうかしましたか?』
「実は、期間限定で小内礼の家庭教師をすることになったんだ。問題ないか?」
『小内さんですか? さすが戸山さんです、人気者ですねっ!』
人気者ではない。間違っても、ない。
『わたしは気にしたりしませんよ。にしても報告してくれるあたり、戸山さんは誠実さんですね~』
「そうか。ならいいな」
麻倉はまったく気にならないと。良かった良かった。
一分後、水元から電話があった。
『お嬢様という方がありながら、浮気されるとは良い度胸ですね』
「……いや浮気じゃないけど。ただの家庭教師だし。それに当の麻倉が問題ないという話だし」
『お嬢様はお優しい方なのです。浮気者を許してしまえる心の広さがあるのです』
だから浮気じゃないって。
「……水元は、小内に教えるのは反対なんだな?」
『小内礼とは、戸山さまを切り捨てた方ではありませんか? そしてお嬢様との勝負で不正行為に及んだ、クズ中のクズでは?』
「まぁ訂正はしない」
『なぜ助けるようなことをされるのか、理解に苦しみます。私でしたら、容赦なく地獄に叩き落としますが?』
確かに、水元の言うことが正しいんだよなぁ。
しかし、俺の中には小内に同情してしまっているところがある。
なぜだろう?
小内が、山白たちからハブられたからか?
つまり小内礼も追放された身だからか?
俺と同じ境遇というわけか。
とはいえ小内は追放加害者でもあるし。
で、それの被害者は俺。
複雑なものだ。
『ですがお嬢様が許可されたのでしたら、私は何も申しません』
いや、けっこう言っていたけど。
通話を終え、ひとまず許可は出たということで。
さっそく小内のために、追試の対策ノートでも作成してやるか。
翌日。
補習後の小内と、俺はファミレスで落ち合った。
「この対策ノートに則って、勉強していくぞ」
小内は対策ノートをペラペラめくって、ほざいた。
「量、多すぎでしょコレ」
「はぁ?」
「もっと重要なところだけ抜き出してよ。前にやってくれていたみたいに」
「あのな。1学期のときより学習内容は濃くなっているんだよ。よって重要なところだけ抜き出したのが、この量なんだ」
と、対策ノートを示してやる。
しかし小内は納得した様子ではない。
それどころか、こんなことを言いだした。
「麻倉彩葉の家庭教師をやっているうちに、腕が鈍ったんじゃないの?」
「なん、だと?」
「家庭教師のレベルが落ちたって言ってるの。しっかりしてくれる、マジでさ?」
なんか、さっそく見捨てたくなってきた。
同時に、小内との比較によって実感するのだった。
麻倉って可愛い教え子だよなぁ、と。
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