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冬休みに入る。
しかし浮かれてはいられない。
2学期の学習を振り返るのが、冬休みの目的だ。
麻倉のため、特別なカリキュラムを組んでやろう。
冬休み1日目。
さっそく俺は麻倉家を目指したが、門は閉ざされていた。
留守のようだ。
スマホで電話してみる。
『あ、戸山さん』
「おう麻倉、いまどこにいるんだ?」
『メキシコです』
「そうかメキシコかぁ……ごめん、なんて?」
『今年の海外旅行はメキシコなんですよ。本当は戸山さんもお連れしたかったんですけど、國重が反対しまして。来年こそは一緒に行きましょうねっ!』
「ああ……しかし、どうして旅行先をメキシコにしたんだ?」
『映画で観てから、行ってみたかったんですよ。本当は死者の日に行きたかったんですけど、その時期は2学期中だったもので』
「あそう。まぁ死者の国には迷い込むなよ」
『了解です。お土産、期待していてくださいねっ!』
「……ああ。じゃあな」
寒い日って、孤独がより強く感じられるものなんだなぁ。
あまりに寂しくなったので、水元に電話してみた。
『戸山さま、いかがされましたか?』
「水元も、やはりメキシコにいるのか?」
『ええ。お嬢様にご同行しています』
「だよなぁ。じゃぁまた」
『では戸山さま、良いお年を』
当たり前だよな、麻倉と水元はワンセットじゃないか。
だが俺にはまだ、鴨下がいる。
さっそく鴨下に電話。
『俊哉、どうかしたの?』
「ああ、たまにはライバル同士で勉強会でもやらないか? つまり、俺とお前で──」
『ごめんなさい俊哉、いまアタシ、山梨にいるのよ』
「山梨って、県の?」
『当たり前でしょ。父方の祖母の家に来ているの。こっちで新年を迎えると思うから、勉強会はまた来年ね』
「……了解」
寒風が吹き抜けた。
俺は身を震わせてから、コートの襟をかきあわせる。
寒いなぁ。
独り身は、寒いなぁ。
スマホに着信があった。
誰だか分からないが、俺の孤独を癒してくれる相手か?
「はい?」
『……もしもし、戸山?』
「……小内か」
そういや、着信拒否にしていなかったな。
どうせ電話なんか、かかってこないと思っていたから。
「何か用か?」
『その……戸山に頼みがあるんだけど』
ふむ。なんだか、しおらしいな。
弱っているともいえる。
「頼み?」
『……わたしに勉強を教えてほしいんだけど。追試験のために』
期末テストの場合、赤点を取ったら補習だけでなく追試験がある。
この追試験にも不合格だと、かなり厳しいことになる。
「赤点だったのか?」
『そう、現代文と英語』
「補習をちゃんと受ければ、追試験の合格は可能だろ」
『どうだろ、わかんない。ねぇ戸山。お願い、わたしを助けてよ』
独り身でさえなければ、なぁ。




