表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/63

39

 




 地獄の勉強会も二度目だ。


 麻倉の行動パターンも読めてきた。


 この教え子は、朝に逃げ出す習性がある。


 よって土曜日。麻倉家に泊まり込んだ俺は、早朝に起きた。

 そして麻倉の部屋前に行き、待機。


 そろりと出て来たパジャマ姿の麻倉が、ギクリとする。


「と、戸山さんっ! 朝から女の子の部屋の前で何事ですかっ!」


「見張っていた、お前が逃げないように。で、今はどこに行こうとしていたんだ?」


 麻倉は顔を赤らめた。


「トイレですよ。おしっこするんです」


「ほう。本当だろうな」


「おしっこで嘘はつきません」


「よし行くぞ」


「え、どこへです?」


 俺は当たり前すぎることを言った。


「トイレに決まってるだろ」


「そ、そんなところまで付いて来る気なんですかっ! あの、わたし女の子ですからね、戸山さん忘れてないですか?」


 麻倉が激しく動揺する。

 やはりトイレというのは嘘で、逃げる気だったな?


 俺は騙されんぞ、麻倉彩葉。


「お前がちゃんとトイレで用を足すのか見届ける」


「見届けさせませんよっ! それ、もうただの変態ですよっ!」


「確かに。じゃ音だけ聞くから、ドアを隙間開けておけ」


 麻倉が顔を両手にうずめて、いやいやした。


「より上級者向けの変態になりましたけど!」


「いいか、お前が何と言おうと、俺はお前のおしっこの音を聞いてやるからなぁ!」


「戸山さま」


「は?」


 後ろから肩を叩かれ、振り返ると水元の姿があった。

 ついで水元の拳が視界にぐーんと迫ってきて──


 殴られた。


 意識が暗転。


 朝だったもんで、俺もテンションが変でしたね。反省します。


 とにかく麻倉が逃走することはなかった。

 麻倉も成長したようだ。


 ただしトイレに行くたびに、俺に警戒の眼差しを向けてくるようになったが。


 どうやら、俺のことを『おしっこフェチ』と勘違いしているらしい。とんでもない誤解だ。


 さて。

 この勉強会では、まず数学・英語・現代文を重点的にやった。


 現代文については、麻倉は自力で赤点を回避できるかもしれない。

 しかし将来のことを考えれば、いまのうちに現代文を得意分野にしておきたい。


 それは文系の選択を予定しているから、というだけではない。


 麻倉の目指すものは、法律家だ。

 法律の解釈には、読解力も必要となってくる。


 よって現代文は常時、90点は取れるようになってもらわなければ。


 勉強会の最終日。


 最後の仮想テストで、麻倉は全ての科目で赤点を回避。

 最高得点は、現代文で78点だった。


 麻倉が涙ぐむ。


「うう。わたし、こんなにも成長しましたねぇ」


「まあな。しかし本番で結果を出さなきゃ意味ないぞ」


「戸山さん。わたし、褒めて伸びる子ですよ。ここは伸ばしてください、今後のためにも」


 俺は溜息をついた。


 それから麻倉の頭を撫でる。


「お前の潜在能力は、せいぜいEランクだと思っていたんだがな」


「え、地味に酷いです」


「まぁ最後まで聞け。もしかするとお前は、本当にSランクくらいあるかもしれない。たぶん、たぶん、たぶんなぁ」


「後半の『たぶん』連呼が引っかかりますが──ありがとうございます、戸山さん。ご期待に応えますよっ!」


「よし、やったれ麻倉彩葉」


 というわけで週明け。

 期末テスト開始。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ