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俺と鴨下は、1回戦のスタート地点に移動。
エクストラ部門について再確認しておく。
「流れはシンプルだ。最初のステージに入り、そこで出題された超難問を解く。その解答を打ち込み、正解なら扉が開く。そして次のステージに移動。
制限時間内にゴールに辿り着くか、または対戦相手よりも先のステージへと進めたほうが勝利」
「準備はできているわ。いつでも始められるわよ」
テンションの高い鴨下。
睡眠不足によるハイ状態らしい。
ハイ状態って、いきなりプツンと切れるんだよなぁ。
この先が心配だが、まずは1回戦の突破だ。
先行の対戦相手ペアがタイムリミットで終了。
どうやら最初のステージで制限時間の20分を使いきったらしい。
「つまり最初のステージをクリアすれば、自動的に俺たちの勝利だな」
「1回戦だけあって、対戦相手は雑魚のようね」
開始の合図があった。
スタート地点から、最初のステージ内へと入る。
そこは教室を模したステージだった。
「それで俊哉。どこに超難問があるの?」
「そりゃあ──どこだろうな?」
教室のどこにも、肝心の出題された超難問がない。
「問題を探すところからが、ゲームらしい」
もしかして先行ペアは、問題さえ見つけられなかったのでは?
ちなみに教室といっても、ようはセット。
観客席からも丸見えだ。
そこにいる麻倉が、熱心に応援してきた。
「頑張れ~、戸山さぁん! フレ~フレ~、鴨下さぁん!」
鴨下が視線を下げて言う。
「ちょっと恥ずかしいんだけど、麻倉さん。ほかに応援なんかしている人いないわよ?」
「まぁスポーツ大会とかじゃないしな。応援している物好きは麻倉くらいだろうな」
「やめさせてよ、恥ずかしくて集中できないわ」
「心頭滅却しろ」
俺はもう慣れた。
机の裏を覗いていくと、張り付けられていた問題用紙を発見。
「よし超難問を見つけた。あとは解くだけだ」
俺と鴨下の作戦はシンプルだ。
別々に問題を解き、導き出した解答が一致しているのならばOK。
一致していなかった場合のみ、話し合いタイムに入る。
互いの解き方を検討し、どちらの答えが正解か決めるわけだ。
今回は双方とも解答は一致。
ちなみに俺のほうが2分早く解いた。
「遅かったな、鴨下」
「うるさいわね。まだ本調子じゃないのよ」
この解答を、教卓の上に置いてある端末に入力。
黒板脇にある扉が開いた。正解だった証拠だ。
その扉を通過したことで、俺と鴨下の勝利が確定。
まずは幸先よく1回戦突破だ。
「超難問といっても、たいしたことなかったわよね?」
「1回戦の最初のステージだしな。逆にいえば、こんなところで苦戦していたら優勝は無理という話だ」
観客席に移動したら、麻倉が抱き着いてきた。
「戸山さぁん! さすがですね、1回戦突破おめでとうです!」
「よしよし」
うーん。この子犬を愛でる感じ。
鋭い視線を感じたので、俺はてっきり水元かと思った。
しかし水元はいない。麻倉の飲み物でも買いに行ったのだろう。
ならば誰の視線だ──?
ハッとして見ると、鴨下と目があった。
「鴨下?」
「ねぇ俊哉ってもしかして──麻倉さんと付き合っているの?」
「え? いや、違う。俺は麻倉の家庭教師だ」
俺の説明が耳に入らなかったらしく、鴨下はさらに言う。
「先週、アタシに告白しておいて、もう他の恋人ができたというわけなの?」
とたん麻倉が驚きの声を上げた。
「戸山さん、鴨下さんに告白していたんですかっ!」
「それは──」
水元が帰ってきて、
「ああ修羅場でしたか」
と言って、回れ右して立ち去った。
いや、立ち去るなよ。
修羅場でもねぇよ。




