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 数学オリンピア関東大会の会場までは、麻倉家が送ってくれる。


 待ち合わせ場所に行くと、すでにSUVが停まっていた。

 そばで麻倉が手を振っている。


「戸山さん、こっちですよ~」


 SUVの運転席を見ると、ドライバーは國重。


「おはよう、戸山くん」


「どうも……」


 麻倉が周囲を見回す。


「ところで鴨下さんは、まだですかねぇ?」


「そういや遅いな。あいつ10分前行動するタイプなんだが」


「鴨下さんって、学校でもテスト当日はギリギリで登校してきますよ」


「え、そうなのか?」


「はい。目の下にくまを作って」


「え……」


 嫌な予感に駆られていると、鴨下がようやく来た。

 目の下に隈を作って。


「鴨下! なんでちゃんと睡眠取ってないんだ?」


「睡眠不足なんかじゃないわよ」


「鏡を見て、目の下の隈を見てから言ってみろ。睡眠不足じゃなきゃ、そんな隈はできない。昨夜は何時まで起きていたんだ?」


「……朝4時」


 現在時刻、6時半。


「2時間半しか寝てないじゃないか!」


「実際は5時半に起きたから、1時間半ね……けど大丈夫よ、俊哉。アタシにとっちゃ、平常運転だから」


「そこ偉そうに言うところじゃないぞ。どうして前日までそんな無理して勉強したんだ。睡眠不足が脳にどれだけマイナスか知らないお前じゃないだろ」


「……」


 鴨下の表情を見ていたら、俺はふいに気づいた。


 さては勉強していたんじゃなくて、緊張のあまり寝付けなかったな。


 定期テストでケアレスミスする原因も、これか。

 テスト前ちゃんと眠れず、睡眠不足でテストを受けるから凡ミスをする。


 逆に、よくこれで学年2位の得点が取れたものだ。


「とにかく、移動中に少しは寝ろ」


 車内には水元もいた。


 そういえば、弁当のお礼を言ってなかったな。

 持って来てくれるのは麻倉だが、作ってくれたのは水元だった。


「弁当、ありがとうな」


「お気になさらず。全てはお嬢様のためです」


 全員が車内に乗ったところで、出発。


 鴨下はすぐに眠りにつき、俺の肩を枕がわりに爆睡。

 車の揺れがいい感じに眠気を誘ったようだ。


 45分後。会場に到着。


「あ、見てください戸山さん。テレビ局クルーが来ていますよ」


「どうせローカルだろ」


「えっ、テレビ!?」


 と、鴨下が跳ね起きる。


「テレビごときで騒ぐなよ。テレビなんてもう斜陽産業だろ」


「テレビはテレビよ」


 俺たちは会場入りした。

 エクストラ部門の開始まで、まだ30分ある。


「勝ち進めば昼休憩を挟んで、15時ごろが決勝か」


 麻倉がワクワクした様子で言う。


「エクストラ部門って、トーナメント形式なんですね。どういう対決方式なんです?」


「そこはエクストラだけあって、普通の試験とは違う。アトラクション方式らしいな。各ステージで問題を解いていき、先にゴールしたほうが勝ち──面倒だよなぁ」


「楽しそうですね!」


「楽しくない。超難問を解くだけでダルいのに、ステージによっては走らされるらしい」


「対戦は観覧できるんですか?」


 これに答えたのは水元だった。


「観客席から可能です」


「え、応援もできるんですか? それなら応援グッズを持ってくれば良かったです」


 水元が肩にかけていたダッフルバッグを置き、開いた。

 そこには多様な応援グッズが詰め込まれていた。


「お嬢様が必要とされると思い、準備しておきました。どうぞお使いください」


「さすがの美園です。戸山さん、鴨下さん。応援はわたしにお任せください!」


「やめろよ、応援とか恥ずかしい。絶対するなよ」


 麻倉がしょんぼりした。


「……分かりました。すいません。わたしの応援なんか不要ですよね」


 麻倉、ガッカリしすぎ。

 そして水元、殺意の視線を向けてくるな。


「……と思ったけど、やっぱり応援いいよな! 凄く嬉しいぜ、麻倉!」


 麻倉の顔がパッと輝く。


「ですよねっ! このわたしに任せてください!」


 そうこうしているうちに1回戦が始まった。





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