表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/63

20

 



 麻倉が適当なことを言うものだから、事態はややこしくなった。


 ただでさえ、ややこしかったのに。


 國重はしてやったり顔だ。


「彩葉お嬢様、ご提案があります。来週末、数学オリンピアの関東大会が開催されます。これに優勝すると全国大会へ進めますが──そこまでは要求いたしません。戸山くんが関東大会で優勝できれば、私も認めましょう。戸山くんが彩葉お嬢様の家庭教師となることを」


 関東大会レベルでも、難易度は高すぎだ。


 俺は天才型ではない。

 よって数学の閃きは天才に負ける。


 麻倉の脇腹を突いた。

 ムリだぞ、と知らせたくて。


 麻倉は「ひゃん!」と変な声を上げた。


「な、なんですか、戸山さん?」


「優勝は無理だ」


 麻倉は落胆するかと思ったが、そうではなかった。


「戸山さんが無理というからには、銀河系レベルの天才たちが集まる大会なのですね」


「いや、そこまでじゃないと思うが」


「それなら戸山くん──」


 と、國重が会話に入ってきた。


「エクストラ部門の優勝ならば、どうかな?」


「エクストラ部門だって?」


「言うなれば娯楽的な催しだ。本選と違い、お遊びで参加する者がほとんど。つまり、戸山くん。君が恐れる天才たちは、エクストラ部門には出場しない」


 エクストラ部門か──

 一考してみる。


 まず大会で出題される数学の範囲は、高3で習うまでだろう。


 こっちは高校3年間で習う範囲、ざっと予習してはある。


 それに國重はかなり譲歩してきた。これ以上は望めない。


「分かった。エクストラ部門とやらで優勝してやる。しかし、大会は来週末だったか? いまからで出場手続きは可能なのか?」


「受付期限は明日の深夜零時までだ。ネットで参加手続きできる」


 それから國重は、麻倉を見やる。


「よろしいですね、彩葉お嬢さま? 戸山くんが優勝できなければ、諦めていただきますよ?」


「はいっ。戸山さんなら余裕で優勝です!」


 麻倉め、簡単に言ってくれる。


 その後、國重から大会のパンフレットを渡された。


「じゃ麻倉。いまは赤点補習を頑張れよ。俺はいまから数学漬けだ」


「頑張ってくださいっ!」


 自宅に帰って、初めてパンフレットを開いた。

 エクストラ部門は──


 なんだと。


 國重に嵌められた。


 エクストラ部門はペアと参加するものだ。

 合計点で勝負するのではなく、2人で超難問を解いていくシステム。

 

「あの女──」



 △△△



 翌日。


 朝からずっと考えている。


 エクストラ部門の相方をどうするかと。

 

 数合わせでいいなら、水元あたりに頼める。


 だが数学の超難問を解くとなると──やはり相方も戦力になってほしい。


「どうしたもんかな──俺並みに賢く、かつ大会に出てもいいという暇人。そんな都合の良い奴が、簡単に見つかるはずがない」


 廊下を歩いていると、後ろから呼びかけられた。


「待ちなさい、戸山俊哉!」


 振り返ると、鴨下瑞奈が駆けてくる。


 なぜ鴨下は、いつも俺に構ってくるのか。

 よほど暇人らしい。


 まてよ、暇人?


 それに鴨下の学力は、俺の次には高い。


 鴨下が俺の前で急停止。


「戸山俊哉。このまえ保健室で会わなかった? あたし具合が悪くて、記憶が曖昧なのよね。それで──」


 俺は鴨下の手を取った。


「な、なによ?」


「鴨下、是非とも俺のパートナーになってくれ!」


「え、ええっ!」




気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。


すでにブクマ・評価してくださった方、ありがとうございます! 励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ