びーのえるだった。
ボビーお兄様にエスコートされ、王城の庭園で開かれているパーティー会場へ足を踏み入れた途端。
私は思わず卒倒しそうになった。
なぜなら、前世の記憶の一部が、私の中に舞い込んで来たからであった。
私の視線の先には、本日めでたくも誕生日を迎えたエドワード様がいた。
そして、その側には狼の獣人族であるシド様に、エルフ族のクリス様、ドワーフ族のオリヴァー様もいた。
彼らを視界に映し、私はこの世界の本当の姿を知ってしまったのだった。
まさか……。
この世界は、びーのえるだった……?
その事実に、思わず泣き出しそうになったのは。
安寧なる未来に少しの翳りが見えたからか。
あるいは、前世の記憶に彩られた腐った部分が疼いてしまいそうになったからなのか。
あまり追求したくはないところである。
動揺を鉄仮面の下に必死に押し込んだ私の脳裏には、きらびやからなゲームのパッケージが浮かんでいた。
そして、そのパッケージに描かれていたのは、今、目の前にいる彼らの未来の姿であった。
家族や友人のことを忘れていても、そのパッケージについてははっきりと覚えているとは……。
そのことにも軽いショックを受けながら、私はボビーお兄様に連れられ、本日の主役に挨拶しに行かねばならぬのであった。