ルート変更したいです。
シド様ルートを放棄して、クリス様ルートかオリヴァー様ルートに変更すれば良いことに気がついた私は、二人の様子を見に行くことにしたのだ。
クリス様やオリヴァー様に想い人が居た場合、この計画は破綻するのだから。
とは言え、私は油断していた。
ルート変更など、造作もないと思っていたのだ。
それが敗因だったのかもしれない。
まさかあんな場面を見てしまうことになるとは……。
最初に見付けたのは、クリス様の方であった。
普段は落ち着いている彼が、急ぎ足でどこかへと向かっている姿はとても珍しい。
その際、周囲を警戒していることも気になった。
私はそっと彼の後を追いかけた。
バレない程度に距離を開けて。
クリス様が向かった先は、旧校舎の図書室であった。
古い文献があるばかりのそこは、余程のことがない限り使われることはないと聞いていたが……。
一体、何の用があるのだろうか。
図書室へと向かう廊下には、二人分の足跡が埃の上にはっきり描かれていた。
どうやら、クリス様の他に誰かがやって来ているようだった。
嫌な予感がした私は、慌てて図書室の扉の前へと足を進めた。
扉にかけようとした私の手がピタリと止まる。
奥から何やら話し声が聞こえてきたからだ。
「……ふふ、可愛いね。僕のお姫様は……」
「かっ! 可愛いなどという戯言はよしてください」
「ほら、早くキスをして」
「……っ!」
そろりと扉を開けて、中を見た私は決して痴女などではない。
二つの声に聞き覚えがなければ、私とて覗き見などしなかっただろう。
扉の向こうには、二人の影が重なっていた。
何度も繰り返されるリップ音が私にも聞こえてくるのは、きっと彼の仕業だろう。
そこには、唇を交わし合うキース王子とクリス様の姿があったのだ。