結局、鯉している。
私は四人の美少年たちの会話を尻目に、熟考していた。
ボビーお兄様を傷つけないで済むようには、どうすれば良いのか。
ボビーお兄様の片想いが報われれば、一番傷つかないのであろうが。
しかし、ここで私の中に葛藤が生じる。
ボビーお兄様が傷つかないのであれば、ボビーお兄様の恋は叶えてあげたい。
だが、そうなるとエドワードのシド様ルートが無くなり、エドワードは想い人を得られることなく私と正式な婚約を結んでしまうのではないだろうか。
それはいけない。
本末転倒である。
でも、しかしーーーー。
ボビーお兄様の恋焦がれる視線や愁いの帯びた吐息を、見聞きしてしまったのが運の尽き。
どこまでも、シド様のことが好きなのだということが分かってしまえば、協力してあげたくなる。
仕方がない。
ボビーお兄様には、庇護欲をかき立てる何かがあるのだから。
私はボビーお兄様の悲しそうな顔に弱いのである。
泣かせたくない。
その思いが私の中で膨らんでゆく。
そのとき、私に天啓が舞い降りてきた。
まさに、神の思し召し。
「そうか、違うルートに変更させればいいのか」
ぽつりと呟いた私の言葉に、少年たちの疑問符が突き刺さる。
しかし、その疑問に答えることは出来ない。
特に、エドワードには。
「すまない。野暮用が出来た」
私は無意識の内に笑顔になってそう言うと、その場を足早に立ち去った。
私の珍しい笑顔にエドワードとジャンの口がぱくぱくと鯉していたことには、気付かなかった。