鯉のように恋をする。
「随分と楽しそうだな」
突然聞こえてきたその声に私たちはびくりと肩を揺らし、ゆっくりと後ろを振り向いた。
そこに居たのは、観察対象その人エドワードであった。
私とジャンは咳払いをすると、すくっと立ち上がる。
「兄上、聞いていたんですね」
ジャンが苦笑いで答えた。
「何してたんだ?」
ワクワクと好奇心に輝く瞳を向けられ、その余りもの眩さに私は手で目を覆った。
「セシリア曰く、サバゲー? ごっこというものらしいです」
「そうなのか、セシリア」
キラキラビームが真っ直ぐ私の方を向く。
なるべく、違うところを見よう。
私は半ばジャンの顔を見るようにして、返事をした。
「まぁ、ほんの出来心というものだ。それより、シド様が何か言いたげにしているが、いいのか?」
エドワードが「やりたい」と言い出す前に、私は話を変えた。
面倒臭いとか、面倒臭いとか、そんなことは思っていない。
「ん? なんだ、シド」
こてん、と首を傾げるエドワードに顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくさせているシド様。
まるで鯉のようだ。
いや、実際に彼はエドワードに恋をしているのだろう。
彼からエドワードへと流れていくねっとりと甘い空気がそのことを雄弁に語っている。