エドワードの独白。
セシリアと初めて会ったのは、確か七歳の誕生日だった。
思えば、あの時からそうだったのかもしれない。
彼女は、キースお兄様に言われ、拗ねたジャンの後を追いかけていった。
その後ろ姿に、惹かれたんだと思う。
俺は、心のどこかで驕っていたんだ。
みんなに、世界に、愛されるのが当たり前なんだと思っていた。
誰もが皆、俺のことを肯定した。
誰もが皆、俺のことを褒めた。
俺のなす事やる事すべてが、正解だった。
でも、それが幼いながらに虚しかったのもまた事実だった。
気難しい大臣たちも。
気性の激しいはずの凶暴な動物たちでさえ。
俺の言うことは聞くんだ。
不思議だった。
争いのする方へ向かえば、自然と皆が和解した。
俺が願えば、天候だって変わった。
何もかもが思い通りに動いてしまうんだ。
こんなに怖いことはなかった。
そんな中、セシリアだけは無関心だったんだ。
あんなにも俺に無関心な女の子なんて初めてだった。
それがどうにも悔しくて。
ブラッドレイ領に遊びに行っても、彼女はいつもジャン、ジャン、と弟の名前しか呼ばない。
もの凄く興味が湧いた。
彼女の瞳に映るには、どうすればいい?
彼女の心を捉えるには、どうすればいい?
気がつけば、彼女のことばかり考えていた。
俺にはどこか被虐心があるのかもしれない。
だって、あんなにも無関心な彼女のことを好きになってしまったんだから。
こんな自分は初めてだよ。
彼女をこの腕に閉じ込めて、どこにも行かせたくないんだ。
あ、そうだ。
今朝は言い忘れていたんだけど。
昨日、俺とセシリア婚約したから。
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エドワードの最後の言葉に衝撃を受けたシドとボビーなどお構いなしに、馬車はがたごとと道を進んでゆく。
波乱の学園に向かって。