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ヒロインを守るためならば。
「じゃあ、セシリア。君が俺の婚約者になってよ」
綺麗な笑顔でエドワードがそう言ったのは、私の涙がおさまった後だった。
「……それが、償いになる?」
私の言葉にエドワードは笑顔で頷いた。
「あぁ、もちろんだ」
ここで私は考える。
彼はいずれ運命のカレを選ぶのだ。
誰を選ぶかは分からないが、私ではないことだけははっきりとしている。
ならば、この婚約はいずれ破棄されるだろう。
この婚約に意味はあるのだろうか?
……いや、待てよ。
私は律儀に返事を待つエドワードを見る。
端正な顔立ち。
大きく潤んだ瞳。
赤く色づいた唇。
桃色に染まる頬。
なるほど。
これをこのまま世に放っているのは危ない。
運命のカレをエドワードが選ぶそのときまで、私が婚約者となることで彼の貞操は守られるのではないか。
ならば、この婚約に意味はある。
いやむしろ、私が彼の女避けにならなくてはならない。あるいは、男避けに。
その結論に至った私はドレスの裾をつまみ、恭しく頭を下げた。
「何卒、宜しくお願いします」
私の答えに、彼の笑顔がより一層、華やんだ。