エドワードはヒロインなんだぞ?!
一瞬だった。
エドワードの唇が私のそれに触れたのは。
その一瞬は、まるで時が止まったかのようであった。
それから、彼は照れたようにそっぽを向いた。
その赤らんだ耳を見て、私は急にボロボロと涙を零した。
ダン!と机を叩いて、むせび泣いたのだ。
その様子にエドワードが驚いたようにこちらを見てくる。
普段冷静な私が顔を歪めて泣いているのだ。
驚いたって仕方が無い。
その後、彼は悲しそうな顔をして、
「セシリア、嫌だったのか?」
それはそれは、子犬がしょんぼりと耳と尻尾を垂らしているような錯覚をしてしまうほどの愛らしさであった。
私は彼に向き合った。
やはり、誠実に返さなくてはならない。
そう思ったからだ。
己の不甲斐なさに涙はちょちょぎれるけれども。
私は鼻水をずびっとすすり、真面目な顔で彼に言った。
「すまなかった! 私がエドワードの唇を奪ってしまうなど!! ……一体、どう償えば良いのか」
私の言葉に、エドワードはぽかんと口を開き、それから少しばかり悪どい顔つきで何かを思案していたのだが。
当然、私はそのことに気づかなった。
まだまだ溢れてくる涙を必死で拭いながら、絶望の最中にいたのだから。
私が……!
私が…………!!
エドワードを、穢してしまった!!