なんてこったい。
夕暮れの中、エドワードの真っ赤な髪が空に溶け出してゆく。
私は何故、自宅の庭でヒロイン(♂)に手を引かれているのだろうか。
幾度となく遊んだのだろう。
エドワードの足は、迷うことを知らない。
勝手知ったる様子でずんずんと庭を進んでゆく。
そうして辿りついたのは、一軒の東屋であった。
エドワードはどこか不機嫌な様子でどすん、と腰を落ち着けた。
手を引かれるがまま、私もその隣に座る。
「エドワード、」
「しっ!」
しっ! だって。
唇に指を当てて、しっ! だって。
私の思考回路が停止したのも仕方が無い。
それほどまでに今のエドワードの仕草は可愛かったのだから。
いやいや、そうではなくて。
私は首を勢いよく横にブンブンと振った。
しっかりするんだ、年齢不詳。
精神年齢、幾つだと思っているのだ。
自我を保つのだ。
世界に抗え。
それから、頬をビタンと一発叩いて。
もう一度、口を開いた。
「エドワード、わた」
紡がれた言葉は、エドワードによってどこかへ行ってしまった。
彼の長いまつ毛が目の前を占拠し、彼の芳しい香りが脳内を占拠し、彼の柔らかな唇が私の唇を占拠していた。
私、ボビーお兄様との最後の思い出を作りたかったのだが……。