そんなこんなで。
「非常識ではあると思いましたが、これをどうしてもボビーお兄様にお渡ししたくて……」
ボビーお兄様に、ミサンガを差し出す。
「これは、何だい?」
「お守りです。私の髪で作りました。これが、自然に切れるとき、願いが叶うと文献にございました」
私がボビーお兄様の手首にミサンガをつけると、お兄様はとても嬉しそうな顔をしていた。
眼福ものです。
「このために、あんなに綺麗な髪まで切ってしまったんだね。ありがとう、セシリア」
長い髪が重かったことや、手入れのための時間が惜しかったこと、そして将来的にオンセンのある中央地への冒険のために、今からショートヘアに慣れてもらっておいた方が良いだろう、なんて打算は何一つなかったことにしておこう。
うん、それが皆の幸せになれる道だ。
「セシリア、俺には?」
わくわくと瞳を輝かせて、そう問いかけてきたのは、エドワードだ。
「ないよ」
私の言葉に項垂れるエドワード。
その肩をポンと叩いたのは、シド様だった。
「……諦めろ」
「……いやだ!」
駄々をこねてもなお、あどけなさが抜けないのはやっぱりヒロインだと思う。
「そうは言われても、もう捨てたのだが……」
「でもでも! 俺たちだって、なかなか会えなくなるじゃないか!」
「でもでも、会えなくても構わないと思わないか?」
「思わない!」
「そうか……」
顎に手を当てて悩む私を見かねたボビーお兄様が、ある提案を持ちかける。
「それなら、最後に二人で庭でも見てきたら良いよ」
キラリとエドワードの瞳が輝き。
ギラリとシド様の睨みがボビーお兄様に届いた。
「では、そういうことに致しましょうか。皆様、いつもながらご自由にお寛ぎくださいませ」
お母様の言葉を合図に、私たちは一度夕食までの間、解散となった。