ショートヘアは非常識。
お父様譲りの銀髪を丁寧に丁寧に編み込む。
作業が終盤になる頃には、ジャンも部屋に戻ってきていた。
そして、かなりの時間が経っていた。
西陽が部屋の窓から射し込んでいたのだ。
「……夕方か」
「もう、兄上たちは来てると思うよ」
「まぁ、それならそれで仕方が無いだろう。仕上げをしたら、屋敷に戻ろう。すまないな、ジャン」
「セシリアと一緒に怒られるのはもう慣れたよ」
ジャンはそう言って、肩を竦めた。
夕暮れの中、私とジャンは急ぎ足で街中を歩いていた。
子どもたちの姿はなく、家々からは温かな灯と夕飯の匂いが漂ってきた。
不安になったのか、ジャンの手が私の手に触れる。
私は彼の手を握り、そのまま二人で駆け出した。
このまま、いつまでもどこまでも、こうしていたい。
何とはなしに、そんな風に思った。
「まぁ、セシリア! こんな時間までどこに行っていたのですか! 皆が探したのですよ! それに、その髪……」
屋敷に戻って早々に、私を叱ろうと思ったお母様は、私の髪を見て顔を青くさせていた。
屋敷には既にエドワードやその他、彼の攻略対象者たちが勢揃いしていた。
そして、彼らもまたお母様と同じように唖然とした表情をしており、ヘレンにいたっては卒倒していた。
「すみません、お母様」
「い、いえ。それより、その髪……」
「かなり、軽くなりました」
「ど、どうして……」
そのとき、ショートヘアになった私をどうしていいか分からない大人たちを退けて、小さなミルク色が二つ、飛び出してきた。