ジャンを追いかけて。
そんな失礼なことを考えている私の耳に、エドワード王子の溜め息が聞こえてきた。
「はぁ、全く。困った弟だ。キースお兄様も何か言ってください!」
「何かって?」
「何でもいいです。悲しいけれど、ジャンはキースお兄様の言うことなら素直に聞くから……」
少しだけ寂しそうなエドワード王子。
その破壊力たるや。さすが、ヒロインなだけはある美少年っぷり。
キース王子と私以外のみんなが心配そうにエドワード王子のことを見ていた。
「あはは、じゃあその役はセシリア嬢に譲るよ。ジャンは、君と同じ五歳なんだ。だから、話も合うんじゃないかな?」
キース王子、さてはこの状況を楽しんではいませんか?
まぁでも良いだろう。
ジャン王子と呼ぶのもそろそろ飽きてきた頃だ。折角、短くて素敵な名前なのだから、ジャンと呼ばせてもらえるように頑張ってみようか。
それに何より、世界に愛されし兄にコンプレックスを抱く弟、など何だか涎が出てきそうな案件でもある。
「それでは、僭越ながら私がジャン王子の後を追わせていただきます」
私はそう告げると、第三王子ジャン様の後を追って、足を踏み出したのであった。
ボビーお兄様が少しだけ不安そうな顔をしていたのが、大層美味しゅうございました。