5話:ソニーバンク構想と大手銀行との交渉1
2000年3月16日、臼井重光はソニーのオーディオ・ビデオ部門、コンピューター部門、エンターテイメント部門からの、お呼びもかからず、どうしたよ良いか、悩んでいるときに人事部長から、君、以前から投資をしていたと聞かれ、株の売買をしたことを認めると、実は、まだ、機密情報なんだけれどと前置きして、この情報は絶対に口外してくれるなと言われ了解した。ソニーで、今迄とは全く違う、銀行、金融、保険部門へ進出しようかという、プロジェクトが進められていると話した。
そこで君の経歴を生かしてみないかと打ち明けられた。21世紀はハードウェアからソフトウェアの時代だという人もいて、技術のソニーだけでは、きっと将来行き詰まるかも知れないと言う危機感があるのも事実だと言った。そんな道の海への冒険の旅に先駆者として出て、水先案内になって欲しいと言われた。それを聞いて、それは社命ですかと聞くと、そうだと言い、期限は、いつまでですかと聞いた。2000年4月末迄に決めてくれと指示した。
もし、その指示に背いたら退職勧告もあるのですかと聞くと、ここは日本でありアメリカではない、退職勧告なんか出すわけないだろう。ただ、与えられる仕事がなくなるかも知れないと言うことだと冷徹に言った。それを聞いて、ソニーは、これまでは世界一の技術で世界をリードしてきたが今後、コンピューターの世界で、世界と戦えるだけの金も政府の後押しもない。ゲーム機械は、所詮、市場が小さい。映画市場も、アメリカの壁は高く入れないだろう。
そうするとハード部門で将来的に世界で戦えるものがないと臼井重光も冷静に分析すると、わかってるじゃないか、全くその通りだと言った。その点、金融は旧態依然とした銀行と証券会社の形式だけだ、コンピュター時代になれば、きっとインターネットを介した新しい金融ビジネスモデルというのができあがって来るはずだと杵山人事部長が言うと、その点は、理解できますというとわかってくれるかと言い、笑顔を浮かべた。わかりました。
その部門に異動することに同意しますと言うと、そりゃー良かったと握手してくれた。その後2000年2月15日からある大手銀行との交渉に杵山人事部長と一緒に出かけるようになった。つまり杵山人事部長が率先して金融事業を開拓せよと指示されたようだ。日本の大手3メガバンクとの交渉に一緒について行くことになった。まず東京のMB銀行へ行くと面白い、そうな話だが、今、銀行のネットワーク、ATM構築のことで忙しくて新し領域に踏み出す時期ではなく、また人員も割けないと門前払いだった。
2000年3月10日もう一つの旧勧業銀行系の大手メガバンクはソニーは世界では知られているかも知れないが旧財閥系でもなく協力していくメリットは感じないと言い、銀行の再編の仕事交渉で、それなことに付き合ってる暇はないと交渉を断られた。2000年3月22日、最後に大阪のメガバンク系の銀行に話すと大阪の人とでは本音が見えないので、交渉を打ちきった。すると同じグループの東京の財閥系の銀行の人と話してみたらと紹介してくれた。
その会社の四宮専務さんは、あのソニーが何しに来たのと言い、銀行業務は、これから単に銀行、証券だけに留まらず、インターネットを使った商売、保険など、新しい時代が来ると話した。確かに、そうかも知れないねと言い、そこでソニーとしては基盤のしっかりした大手銀行さんと一緒にその仕事をしていきたいのですと言うと、ふーんと言って、腕を組んで、数分考えてから面白いかも知れない。確かにソニーだったら組んで金融再編の大海原に乗り出すのも悪くないと言った。
といっても私が代表取締役でもなく単なる重役の末席の人間だから、どれだけ、君達の情熱に応えられかわからないぞ言った。しかし試案、プランを完璧なものではなくても、数多くアイディアを出してくれと言い、それを何とかサポートしてあげると言ってくれた。それには試案とプランを私に納得させなければ次へ進めないと言った。もちろんですと言って協力を取り付けられただけでも、来た意味がありましたと言った。同行したソニーの杵山部長は最後の是非、協力宜しくお願いしますと挨拶した。
2000年4月7日、もう1件、準メガバンクへも行くように言われていたが臼井重光が四宮専務さんと心中する気持ちでぶち当たっていきましょうと言った。杵山部長が、ちょと疲れたから一杯やっていこうと言い、居酒屋に入って、奥の席に座り、よく頑張ってくれてありがたいよと言い、実はねと言い、もし、この件で、もしソニーの本体から出るようなことになったら、私はソニーを去ろうと思っていたと本音を告白した。最近のソニーの伸び悩みを見ていると、近いうちに何かでつまづくと、大きな投資をしてる分だけ、大きな赤字を出して、存続の危機を迎えるかも知れないと、今後の
ソニーの展望に悲観的な味方をしていた。
しかし、今日の君の話を聞いていると、自分が恥ずかしくなったと言って、すまんと謝った。それを聞いて、そんな事ありません。私も、やるだけやってダメだったらソニーを去る覚悟はできていますからと言った。そして、その晩はとことん飲んで、騒いで憂さ晴らしした。そして土曜日は休んで日曜日に自分のアイディアをパソコンに書き込んで、箇条書きにいして、アイディアを絞り出して
18項目を書き出した。