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「ここをこうしてっと……できたわよ!」
琴羽は母の手によって、清楚系のファッションとメイクを施された。
そして。
「じゃあ、いってらっしゃい! 琴羽ちゃん!」
「……どこに」
「無論、桐谷とかいう奴のところだ」
「ゆぅ、ちぁ。いつの間に……。いや、それよりも何で遥の所に!?」
当然のように部屋の中に入っていたゆぅとちぁにも、もちろん驚いたが、皆が口をそろえて『私が遥に会いに行く』と言い出していることに一番驚いている。
「……あ、ちなみに、ただ会いに行くんじゃなくて告白するのよ?」
「おおおおおおおおお母さん!? 何言ってるの!?」
ついにお母さんは、頭の病院に行かなきゃいけないほどおかしくなってしまったのか。
「こと。そんな目で母親を見るもんじゃないぞ」
「そうだよ。それにね、こと? 桐谷とかいう奴はことのことが好きみたいだし、ことも……好きなんだろ?」
「……!」
今まで考えないようにしてたのに、どストレートに言われると意識してしまう。
「……あぁ、もう。めんどくさい。とりあえず行くぞ」
「ちょっ、引っ張らないで! 私行くって言ってな」
問答無用でゆぅとちぁに連行されたのだった。
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反論も聞き流されて、無駄にガーリーな服装で遥の前に現れてしまった。
「琴羽? 話ってなんだ?」
「あのぉ……そのぉ……」
後ろで眺めてる二人組に物申したい。
―まだ好きかも分かってないんだけど!?
「話がまとまってないなら、俺から話してもいいか?」
「お、おう」
遥は深く息を吸うと、四十五度ぴったりの綺麗な最敬礼をする。
「ごめんっ! 琴羽のこと考えずに突っ走っちゃって」
「ホントだよね。すっごい迷惑」
「……ごめんなさい。……まぁ、とりあえず何が言いたいかっていうと―友達から始めませんか?」
緊張してるのか、敬語になっていって面白い。
でも、まぁ―
「友達、なってあげないこともない」
「……! 本当か!?」
私がこくんと頷くと遥は嬉しそうに、そして泣きそうになりながら笑った。
―私達の恋愛はまだ始まったばかりだ!




