第陸話《龍虎は、同じ力量を持つライバルと言うが、現実的に考えると龍の方が強くて虎に勝ち目がないと思うのは俺だけか?》
「何を根拠に、そう胸を張っていられるんですか?」
眼鏡をかけた少年一之瀬は、やれやれという表情で龍雅に問う。
「へっ…あまり先輩嘗めてると後悔するぜ。」
「フッ…そちらこそ後輩を軽く見ると痛い目に遭いますよ。」
(どうやらこの眼鏡の仕組みを理解していないそうだな…ククク…この眼鏡は、敵の動きを高速で計算して結果を出す機械…この機械と僕の能力で、お前に勝ってやるよ。先輩…)
一之瀬は、心の中でそう思い、ニヤリと笑んだ。
――あの眼鏡…良く見るとレンズは、透明なモニター画面のようだな。そしてテンプルの部分もLEDの光を…さっきあいつが確立といっていた…ならば、あのレンズは、確率を表示するモニターか? その場合、テンプルの部分が本体だろう。テンプルの部分を壊せば、こっちのものだな。
「こっちから仕掛けさせてもらうッスよ! 先輩!!」
チャラい男は、釘バットに、電気を纏わせて龍雅に向かって突撃した。
「高橋! 無理に突撃するな!」
「一之瀬の作戦は、一々面倒くさいんだよ!」
「大人しく僕の言う事を聞いた方がいいものを…」
――高電圧釘バットか…となると、あいつは電撃能力か…
「ハァ!」
龍雅は、高電圧の釘バットを殴り、釘バットを圧し折った。
「ほら、言わんこっちゃない…」
一之瀬は、頭を抱えてそう言った。
「軽率な行動は、控えろと言った筈だよ?」
「うるさい! そんな所で突っ立ってないで手伝え!」
「はいはい…」
一之瀬が、手をかざすと龍雅は、吹き飛ばされた。
――これは…風能力…風を操る能力か…まるで風神と雷神だな…
龍雅は、壁にぶつかる前に壁を蹴り、壁が衝撃で穴が開き、龍雅は、空中回転して着地した。
――だが、所詮は紗里弥に劣る…だからと言って油断は大敵だ。まずは、データデータと許さい奴から潰そうか…
龍雅は、一之瀬に向かって追尾エネルギー弾の弾幕を放った。
「弾幕の着弾位置を予測開始。」
一之瀬は、モニターに弾幕の弾を全て標準に定め、眼鏡型計測器は弾幕の着弾位置を予測した。眼鏡型計測器は、追尾弾、追尾力高、着弾位置計測、追尾弾回避方法計測と表示され、ローディングが開始され、ローディングが終了された結果は、計測器動力源に着弾する確率90%、計測器モニターに着弾する確率5%、使用者の身体に着弾する確率5%、弾幕の回避方法がモニターに表示された。
(この計測器が狙いか!)
一之瀬は、竜巻や強風を発生させて追尾弾幕を吹き飛ばし、そして竜巻を避け、強風に逆らって進む追尾弾幕を次々と避けていたが…
「俺の存在を忘れんじゃねえぜ。」
龍雅は、一之瀬に接近し、一之瀬は龍雅の突撃を防ぐ為に、両腕を交差させて前に出し、攻撃を防ごうとしたが――
――狙いは、そっちじゃねえよ。
龍雅は、一之瀬の眼鏡型計測器を奪い、自分に計測器をかけ、追尾弾幕は龍雅の方を追尾し始めた。
「ハァッ!」
龍雅は、追尾弾幕を新たな追尾弾幕で、相殺した。
「これでお前の戦力は、激減したって訳だ。」
「クソッ!」
一之瀬が、苦渋に満ちた表情を浮かべた瞬間――
「グハッ!」
龍雅は、刹那の間に接近し、一之瀬の腹を殴り、一之瀬はそのまま気絶した。
「見た目程、美味くなかったな…」
龍雅は、計測器を一之瀬の顔にそっとかけた。
「さて、お前は楽しませてくれるんだろうな? 高橋よ…」
龍雅は、座った状態からゆっくりと立ち、高橋の方にゆっくりと振り向き、狂気に満ちた笑みで、高橋を見た。
「ヒッ!!」
高橋は、狂気に満ちた笑みを浮かべた龍雅を見て尻餅をつき、慌てて逃げようとしたが、立ち上がれず、飢えた捕食者が、目の前の被食者を喰らおうとするかのような表情でゆっくり近づいてくる龍雅に、高圧電流を何度も何度も龍雅に対して放ち、高圧電流が無意味だと知った高橋は、覚悟して眼を閉じた時――
「もうやめてやれ!! 龍雅ァ!!」
虎太郎は、高圧電流と竜巻が合わさった技を放ち、龍雅は、その竜巻を紙一重で回避した。
――何だと…!? あれは、一之瀬と高橋の能力か?
「何のつもりだ? 虎太郎…お前は、見ていろと言った筈なんだが?」
龍雅は、模造刀を虎太郎に向け、怒りが入った低い声でそう言った。
「後輩を虐めるんだったら俺が相手をしてやるぞ! 龍雅!」
虎太郎は、電流を体に纏わせて構えた。
「一つ聞くが、龍雅…その能力は、いつ使えた? そして、いくつ使える?」
「さっきお前の戦いを見ていたら使えた。いくつって言われたら二つか…どうやらお前の能力は、使えないらしい…しかし、何故俺は、使えたんだ?」
虎太郎は、自分の右手を見てそう言った。
――こいつは…他人の能力をコピーする所謂コピー系能力か…ふむ、俺と能力者との戦いにこいつを立ち会わせて虎太郎を熟成させるか…今は、食べ時ではないな。しかし、俺の能力を使わなかったな…と言う事は、俺の能力に何かあるのか? 何れにせよ…熟成した虎太郎を喰らうのは、この俺だ。
龍雅は、心の中で、虎太郎を熟していない食物と見立て、龍雅は虎太郎を熟成させてから喰らうと心の中で誓ったのだ。
そう誓った龍雅の顔は、さっきより狂気に満ちた笑みを浮かべ、虎太郎は、臆せずに構え続けた。
「フッ…虎太郎に、助けられたな…高橋よ。ククク…所で、お前達の名は?」
「俺は、高橋蓮とあそこで寝転がっているのは、一之瀬総司ッス」
「そうか…俺は、剣ヶ峰龍雅。俺を止めたのが、盾ヶ原虎太郎だ。」
龍雅は、模造刀を鞘に納めて、龍雅は蓮に手を差し伸べ、蓮は、龍雅の手を掴んで龍雅は、蓮の手を引いて蓮は、立ち上がった。
「倒れているアイツに伝えてくれ…俺を倒したいならいつでも来いとな。」
「はいッス!」
蓮は、総司を背負って廃工場から逃げる様に去っていった。
「さて、どうしますかァ? 先輩ィ…質の悪い主菜を喰わされて黙っていられると思ってますかァ?」
龍雅は、満身の笑みを浮かべているが、眼が笑っておらずその笑みには、怒りと狂気が感じられる笑みだ。
「待ってくれ! 許してくれ! お願いだ!!」
不良達のリーダーは、龍雅に許しを請い。地に這い蹲る今にも死にそうな虫のように土下座をした。
龍雅は、怯え振るえる不良達のリーダーをゴミを見るような眼で見下し、不良リーダーの頭を踏みつけた。
「…いいでしょう。俺は、雑魚一人をいたぶるのは、至極つまらないモノですからね。貴方には、これくらいで許してあげましょう。」
龍雅は、そう言って不良達のリーダーの体を何度も踏みつけ、龍雅は雑魚をいたぶるのは、つまらないと言っているが、その口は、凶悪な笑みを浮かべている。
「フゥ…これでいいでしょう。雑魚が俺に報復しようだなんて愚かなモノですね。って聞いていないか…」
不良達のリーダーは、龍雅に何度も踏みつけられたショックで気絶し、龍雅は痰を不良リーダーの服に吐き付けた。
「やり過ぎじゃないか? 龍雅…」
虎太郎は、気絶している不良達のリーダーを憐れんだ目で見た。
「絶望を植え付けるには、これで丁度いい寧ろ慈悲のある方だ。」
龍雅は、腕を組んで「ククク…」と笑い、廃工場のカーテンを引き千切り、引き千切ったカーテンで刀を包んで廃工場から立ち去る準備をしたが――途中で、龍雅は廃工場の空いた天井を見た。
「俺達を覗いているのは、誰だ!?」
龍雅は、能力で上に何者かいると察知し、空いた天井に向かってそう叫んだ。
『やれやれ…見つかってしまったようですね…』
ロングコートを着たガスマスクの少女が、ゆっくりと一階に降りてきた。
妖艶な金髪で、声は、まるで犯罪者の声のように重く低い音声合成の声だ。身長は156cmだろうか…そのロングコートは、少女の正体不明さを引き立たせている。
ガスマスクの少女は、いきなり拍手をし始めた。
「何のつもりだ?」
『フフフ…貴方の力に、感動いたしましてね。』
ガスマスクの少女は、拍手をやめ、ガスマスクの少女はいきなり消え、次の瞬間にガスマスクの少女は、龍雅の目の前に現れた。
「ほう…面白い能力だな。」
龍雅は、いきなり目の前に現れたガスマスクの少女に少し驚いてガスマスクの少女に、興味を示した。龍雅は彼女から、何処か懐かしい雰囲気を漂わせるのと同時に、強者独特の威圧感を放っているからだ。
『フフフ…貴方とは、いつかまた巡り合う日が来るでしょう。そうだ…言っておきますが、虎太郎君…貴方は、私とこの人の能力は、複製できませんよ。』
ガスマスクの少女は、龍雅とまた会う約束をし、虎太郎の能力を指摘し、ガスマスクの少女は、空中に浮遊して龍雅を見つめたまま後ろに下がっていった。
『では、私はここで…最後に一言…』
「何だ?」
『私は、貴方が捜していた人物の内、一人の事を知っています…今では、私と同じ位の少女の事をね。』
それを聞いた龍雅は、顔色を変えた。
「お前まさか! 俺の妹の事を…!」
『フフフ…また私と会った時に、お話いたしましょう。では…これにて』
ガスマスクの少女は、龍雅に向かって右足を引いて、右手を体に添えて、左手を横方向へ水平に差し出してお辞儀をし、ガスマスクの少女は、その場から一瞬にして消えた。
「消えた…あいつは、お前の妹の事を知っていたそうだが…一体…」
「俺にもわからない…」
二人は、ガスマスクの少女が消えた場所を見つめた。空いた天井から差し込む夕陽の光に照り付けられながら…
「まぁ、良い…これで俺の妹は、生きているとわかった訳だ。」
「よかったな。龍雅…」
龍雅は、目から一滴の涙を流している。
龍雅の脳裏に、ある光景が浮かび上がる。炎上する人工島、内臓剥き出しになって血に濡れて海に流される龍雅の妹、銃や手榴弾で殺されていく人々、血で満たされた廊下、銃を持った覆面の男達、血を吐き、全身が中に撃たれボロボロになる身体。妹の事を思い出すだけで悲惨な記憶と怒りと悲しみが込み上げてくる。
龍雅は、涙を拭いて後ろを振り向いた。
「行くぜ。虎太郎…」
「ん? 帰るのか?」
「いいや、お前には今から能力者の戦場を観戦してもらう。俺の楽しみでも、お前がお前自身を防衛手段としてもな。お前を妹のように失いたくはないんだ。」
龍雅は、虎太郎の両肩を掴んでそう言う、龍雅の目から、勝者として合間見える事が出来る期待と失いたくないという渇望と真剣さが虎太郎に伝わってくる。
虎太郎は、期待と渇望を持った真剣な目を向ける龍雅に、負けて口からため息をついた。
「わかったよ。何処なりと着いて行ってやるよ。」
「本当か!? ありがとよ! では、行くぞ!」
二人は、倉庫を後にした。
その後、夜まで得大紐の能力者との戦いを続け、龍雅と虎太郎の両方に様々な力を得た。
龍雅は、能力が進化し、虎太郎は、能力を模倣する。二人の力の成長は何処まで続くのか…誰もにわからない
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