第伍話《ライトノベルの主人公の親友は、目立たないとは限らない》
己の欲望のままに生きる男…剣ヶ峰龍雅の友人盾ヶ原虎太郎は、平穏を望む高校生だ。
虎太郎と龍雅の考えは、相容れないが、何故か友人として成り立っている。理由は、趣味の一致か、或いは幼馴染だからか…
一時間目の体育が終わり、龍雅から解放された虎太郎は、体操服から制服へと着替え終わり、席へと着いた。
(ハァ…やれやれ…やっと落ち着ける…)
虎太郎は、机にうつ伏せになってまるでこのまま溶けてなくなりそうな程、だらけた態度を取っている。
「休み時間だからってそんなにだらけては、次の授業に悪影響を及ぼすぞ! 虎太郎君!」
「うるさいな~委員長…いいだろ~休み時間なんだからさ~」
虎太郎の目の前にいる人物…委員長の佐藤乃愛だ。巨乳で黒髪ショートの健康的な美少女で、委員長らしい真面目な性格で、一年の時のクラスは、虎太郎と龍雅と同じ一年G組だ。
学級委員決めは、龍雅と虎太郎が今日のホームルームで、ボーっとしている間に決めていたのだ。
「ホームルームの間もボーっとしていたそうじゃないか。」
「朝なんだから仕方がないだろ…」
「言い訳するな!」
虎太郎は、乃愛に叱られ、虎太郎は耳を塞いだ。
「俺はだな。起きた時から疲れているんだ。だから休み時間は、少しくらい休ませてくれよ。」
虎太郎は、そう言って再び机にうつ伏せになり、そして眠り始めた。
「春の日の暖かさか…まぁ、春の温もりが、人間を眠りに誘うのは、当然か…」
龍雅は、虎太郎が眠る様を見てそう言った。
「だからと言ってこういう態度が続くと…」
「委員長。こいつは、休み時間と授業との態度が違う。だから、心配せずともこのまま休ませてやるがいい。元は、俺の所為かもしれないがな。」
龍雅は、虎太郎をフォローした。
「わかった…では、授業態度が悪ければ…」
「わかっている。その時は、ハリセンなり何なりとやってくれればいい…ありがとよ。」
龍雅は、そう言って立ち去った。
(ありがとう…龍雅…)
虎太郎は、心の中で思い、眠り始めた…が―――
キーンコーンカーンコーン
何たる事か、休憩時間が終わり、眠りの時間が終わってしまったのだ。
(クソがァァァ!!)
虎太郎は、心の中で嘆き、机を叩いた。
――無様なり…
龍雅は、虎太郎が悔しがる姿を見て心の中で嘲笑った。
(まぁ、いいや…二時間目終わったらいいだけの事だし…)
そう言って虎太郎は教科書を取り出して授業の準備をした…
そして数時間後の放課後…部活動が始まった。龍雅と虎太郎は、帰宅部…つまり無所属な為、部活動とは関係の無い、龍雅が入らないのは、帰ったら着替えて喧嘩したい事、そして虎太郎が入らないのは、面倒くさいからだ。
「あの鎧と剣は、どうしたんだ?」
「鎧は、昼休みの時、バレずに家に帰っておいて帰った。剣は、この新聞紙の中にある。」
龍雅は、細長い新聞紙の包みを見せた。
「そうか…龍雅、今日はありがとよ。」
「いいんだよ。俺は、ただ親友の朝の休息時間を守ったまでだ。まぁ、俺がその睡眠時間を破壊する時があるかもしれないがなァ」
「おい、バカやめろよ」
「じゃあ俺達が、永遠に眠らせてやろうか?」
「ん? お前は…あの時の奴か?」
龍雅と虎太郎の道を阻むように現れた十数人の不良達、先頭に立つ男は、数日前、奈菜に鈍器で気絶させられた男だ。
「何だ? てめえ…俺に、復讐しに来たのか?」
「あぁ、そうさ…それに、こっちには助っ人を二人用意してある。」
「助っ人?」
不良集団の中から三人が現れた。一人はチャラ男と言っても相応しい茶髪と金髪のメッシュ髪で筋肉質な悪羅悪羅系ファッションの少年。そして銀河丘高校の制服を着た眼鏡をかけた知的な風貌と何処か凶悪そうなオーラを放つ少年。
「……ここでは、他人に迷惑がかかる。…虎太郎、お前は帰れ」
「親友をおいて帰ると思うか? 龍雅…」
「そうか…それよりもお前、面倒事は嫌いなんじゃ…」
「俺はそこまで腐っちゃいないぜ。」
「じゃあお前のリクエスト通りてめえらをぶちのめす場所を教えてやるよ。着いて来い…」
龍雅と虎太郎は、戦いの場所を教えてもらう為に、不良達に着いて行った。
龍雅達が辿り着いた場所は、かつて工場完成寸前で、会社が倒産してそのまま残った廃工場だ。今では、この廃工場はある不良グループのアジトと化しており、そのグループのメンバー以外は、近付こうとはしない。この廃工場の中に、百人程度の不良が居座っている。
「お前が、こいつらのリーダーか?」
「そうだ。あの時は、油断したもんだ。それにしてもあそこでやっていれば、痛い目に遭わずに済んだのに、俺達の根城に敢えて来るとは、命知らずだなァ!」
「ほう? じゃあ、俺を楽しませてくれよ? つまらないゲームは嫌いだからな。」
「ちょっ、そんな事言ったら…」
「「「「「「「嘗めてんじゃねえぞ! ゴラァアアアア!!」」」」」」」
不良達が、龍雅の挑発に乗って龍雅と虎太郎に襲いかかろうとした時――
「さあ、パーリィの始まりだぜ!」
龍雅は、新聞紙の包みを破り捨て模造刀を取り出し、龍雅は、そこらにあったバールに自分のエネルギーを宿らせて虎太郎に渡した。
「虎太郎。行くぞ!」
「ああ!」
龍雅は、向かってくる十数人の不良達を模造刀の一撃で、吹き飛ばし、そして「フハハハハハ!!」と笑いながら剣を振るって敵を倒しながら工場内を走り、虎太郎は、バールと我流の格闘術で、敵を一人一人倒している。
――雑魚一人を倒すのは、つまらないが、大量の雑魚を倒すのは、実に楽しいな。
龍雅は、敵を倒す度に、清々しくも官能的な気分と力が溢れるような気分を味わっている。
――あの二人…ただならぬ雰囲気を漂わせているな…確かめる為に、前菜を喰うとしよう…そして主菜を喰うか…
「行くぜ…」
龍雅は、力を溜め始めた。
「お前達は邪魔だ!」
龍雅は、力を解放し、巨大なエネルギーの爆発を起こし、虎太郎と二人の助っ人と不良達のリーダーは、爆発を回避し、不良達は爆発に飲み込まれ、廃工場は、煙に包まれた
「安心しろ。命に別条のない火傷程度にしておいた。」
「ゴホッ…ゴホッ…龍雅! てめぇ!! 俺まで巻き込むつもりだったのか!?」
虎太郎は、煙を吸って咳き込み、龍雅に対して怒鳴った。
「お前は、確か多少の傷でも早く治るんだろう? 火傷位どうって事なかろうに…」
「確かにそうだけど…あんな巨大な爆発…ビビるわ!!」
龍雅は、腕を組んでそう言い、虎太郎は、龍雅をツッコんだ
そして煙が晴れて工場内部全体が鮮明に見えるようになった。工場内部には、不良達が、壁際で火傷で苦しむ姿もあれば、爆発によって吹き飛ばされ気絶して動かなくなっている者もいる。
「やるな。だが、助っ人が残っているってことを忘れちゃぁいねえか?」
「Ha! 勘違いすんじゃねぇよ。こいつらを前菜として喰ったまでだ。俺は、メインディッシュを後から喰う派なんだよ。」
「なるほどな。行け!」
不良達のリーダーがそう言うと助っ人二人は、不良のリーダーを飛び越し龍雅と虎太郎との間合いを取るように着地した。
「先輩…ここは、大人しくやられてくれませんかね? 先輩の勝てる確率が、低いんで無謀な戦いは止してもらいたいんですが…」
「そりゃねーよ。一之瀬…俺は、先輩をやる為に来たんだ。先輩! 覚悟してくれっス」
「なるほど…お前らは新入生か…と言う事は、あんたは俺の先輩って訳だな?」
「そう言う事だ。」
「虎太郎…恐らく奴らは、能力者だ。お前は見学してろ。」
「あぁ、わかった。」
虎太郎は、後ろに下がり、見学をし始めた。
「来な…俺が、簡単にやられると思うなよ!」
龍雅は、剣を構えて二人を挑発した。挑発する龍雅の姿は、まるで今にも獲物を屠り喰らわんとする飢えた恐竜王ティラノサウルスのようだ。
感想・リクエスト・質問あればどうぞ