第玖拾伍話《大会という名の戦いの前日に起きた二つの競技のアクシデント/正妻を決める戦いの火種》
(ここは…何処?)
梨奈は、目を覚ました。
いつもの硬い布団ではなくフカフカのベッドの上で目を覚ました。
見慣れぬ天井、見慣れぬ部屋。
いつもの部屋より広くそして綺麗で、女の子らしい部屋だ。
家具も揃っている。
いつもの騒がしい幽霊の気配もない。
壁から新居の匂いがする。
新居特有の臭いは、新たな生活の始まりを予感させる。
梨奈の服装は少し乱れていた。
何かが梨奈の腕を抱きかかえている。
後ろを見ると、そこには半裸姿の龍雅の姿があった。
龍雅は、梨奈の腕にしがみついている。
龍雅の寝顔は、美女のように見える。
梨奈は、数秒だけ見知らぬ美しい女性と一緒に同じベッドで眠ったと錯覚した。
「おはよう。梨奈、よく眠れたか? 昨日は梨奈が襲い掛かってきて…」
「えっ!? 私、先輩を無理やり…」
「なんてのは冗談…」
龍雅は、梨奈の頭を撫で、そして唇にキスをした。
「え? 龍雅先輩が私に…」
「うん、モーニングキスだ。」
龍雅は、そう言って上のパジャマを着て、立ち上がろうとすると――
「兄さん? おはようのキスは、俺からだと言いましたよね?」
宮弥は、そう言って龍雅を押し倒し、龍雅の唇を無理やり奪い、深いキスをする。
「貴様ら、私を差し置いて我が夫とそのように楽しむとは何事か…」
紗里弥は、獄炎の熱と絶対零度の冷気を放ちながら現れた。
紗里弥は怒っている。
勝手に自分達で楽しんでいたことに
「どうして紗里弥先輩がここにいるんですか?」
「フン、宮弥が勝手に未来の龍雅と私の家…もとい私の屋敷に繋いだゲートから来たのだ。それにしても…フン…人間らしい表情をするようになったではないか。梨奈…良きかな良きかな…全く、三人とも愛い奴らよ。」
紗里弥がそう言って梨奈のベッドに座り、紗里弥も龍雅にキスをした。
見た目年下が三人。
三人とも美しく可憐だ。
「朝からモテモテですね。先輩、」
「あぁ、そうだ。龍雅…急遽頼みたい事が出来た。」
「何だ?」
「体育大会に出場する補欠ゴールキーパーと障害物リレーのアンカーが怪我をした。だから龍雅に代わりに出て欲しい。」
「なぁ、部活ってあったのか?」
「あぁ、普段は極星院が保有する能力者クラス及び能力者高校共有の絶海の孤島で練習している。この学校では部活をしてもいいのは、運動において潜在能力の高い能力者のみ…お前には物足りんと思ってそしてお前のハーレム計画の邪魔になると思って誘わなかった。それだけだ。」
「んで、俺にはゴールキーパーを? いいのか? 体育大会までの暇潰しがてら電脳世界で世界レベルのサッカー技術を持った能力者チーム相手を想定したサッカーをやって一人で勝利しているとはいえ、俺は素人だ。」
「それだけの技術があれば十分だ。何、どうせならキャッチしたボールを相手にゴールに向かって投げつければいい。記録を見たぞ? お前、その暇潰しの試合で、ゴールキーパーだけやって33-4で勝ったそうじゃないか。」
「何故ですか!? 阪神関係ないでしょう!」
「どうした梨奈、いきなり…」
「すみません…隕石が落ちた街の前に住んでいたのが大阪でして…反射的に…」
「なるほどな…」
「全く11人相手に、投げるだけで勝つなんて…お前サッカーが何か知っているのか?」
「いや、ロングシュートもしたよ? 自陣のゴールから敵陣のゴールに向けての超ロングシュートを…それにドリブルで11人抜きもした。」
「違うのだ…いいたいのは…サッカーは協力するスポーツなのだ。」
「何、心配するな。役割はしっかり果たすつもりだ。障害物リレーは?」
「障害物リレーというより無数の危険なアスレチックを乗り越えていくパルクールみたいなものだな。勿論、運動神経が必要。空を飛んではいけない。一人三周走るようになっている。能力に使用はサッカーと同様OKだが瞬間移動は使ってはいけない」
「なるほど、なら俺の得意分野だな。目に見えぬ速度で走ってやるよ。それよりも朝飯朝飯…母ちゃんは、またラスベガスで荒稼ぎ、親父は、修行中、姉ちゃんは、アイドル活動…だから、家事をするものはいない。という訳で何か作ってくる。」
「いいえ、兄さんの手を煩わせるまでもありません。俺が一瞬の内に最高の朝食を提供しましょう。」
「ふむ、貴様らは下がっていろ。極星院の次期副会長たる我が料理を解くと味わうがいい!」
「否、俺がやろう。この家の事を理解しているのは、俺だ。それに一瞬にして用意された料理は、愛情がこもってない」
「いいえ、ちゃんと俺が保管している料理は、俺が一から調理して作りました。でしたらあの異世界で作ってきましょうか? あそこは俺が一番理解し、そして時間をかけずに提供できる。」
「馬鹿め…龍雅、自分が一番と思っていたらそうはいかんぞ? 私は、貴様らの妻となる女だ。愛妻料理こそが貴様らの心と腹を満たすものだ。」
「いつから紗里弥先輩も私の結婚相手になっているんですか!?」
「私は愛い奴は、基本ハーレムに加えたいが、私は異性は龍雅しか目が無い。龍雅で十分すぎる。望みさえすれば、姿形を変えてくれる。まぁ、美しく自然体の今の龍雅が一番好きなんだがな。」
「この姿こそ今の俺にとって最上の姿だ。さてと…朝食作ってくる。」
「待て! 龍雅は座して待て、宮弥も待っていろ。緋香里にも本心で認められた我が腕を見せてやろう。」
「いいえ、待つのは紗里弥です。俺の料理においても最強…」
「所詮チート使いだ。チートで得た力など偽物に過ぎない。私の腕こそ本物…」
「フン、ならば俺も本物だな。シミュレーションにおいて最高得点をたたき出した。そして俺の腕は現実世界でも活かされている。そしてこの家の家事を取り仕切っているのは俺だ。ならば、俺が作るのが当然の事だ。」
「私だ。」
「俺です。」
「俺だ。」
「私だ。」
「俺です。」
「俺だ。」
龍雅、宮弥、紗里弥は、一向に譲らない。
こうしている間にも朝の時間が過ぎ去って行くというのに、この三人は口論をしている。
梨奈は、三人を止めようと入ろうとするが、話を聞かない。
「…埒が明かない…よし、梨奈、お前が決めろ。」
「えぇ!? 私ですか!?」
「そうだ。この中で唯一中立なのは、お前だ。」
「は? 梨奈は、龍雅側だろうが…貴様が梨奈を救っただから梨奈は貴様に恩義を感じている筈、それに梨奈は貴様に好意を寄せている。何が中立だ。」
「なるほどな…だが選ぶのは梨奈で変わりない。さぁ、梨奈…誰を選ぶ?」
「えっと…」
「梨奈、私を選ぶが良い。」
梨奈は選択を迫られる。
「俺だよな?」
「私を選べ。」
「俺を選べば、無料券を差し上げましょう。」
三人は、梨奈に迫る。
「無料券? なんでしょうか?」
「俺に対して何かを依頼するのに使えるクーポン券です。あらゆる願いが叶う権利を何の代償もなく使えると言った感じでしょうか。本来なら31億円か、美しい人間を生贄にして捧げなければなりませんがね。」
「では、宮弥先輩で…」
「よし、決まりました。」
「えぇ!? ちょっとそれは横暴だろ!」
「もう決まりましたァ! 異世界転移、そしてオラァ!」
宮弥は、そう言い、一瞬にして異世界に行き、一秒後、龍雅と梨奈の分の料理を持って現実世界に戻ってきた。
「さぁ、兄さん、梨奈。どうぞ…俺は既に部屋で食べてきましたので、紗里弥もそうでしょう?」
「あぁ、私も食べてきた。」
「そうか…なら、食うか…梨奈」
「そうですね。」
龍雅と梨奈は、宮弥が持ってきた朝飯を食べるそして食い終わると、着替え、歯を磨き、そして学校に行く準備をする。
「ゲートを通って学校に行こう。」
「あぁ…行くぞ。」
四人は、宮弥の部屋の開け、そして扉の中に入る。
「ここは?」
「ここは、全てに繋がる異空間といっても解放されているのは、今の俺と兄さんに関連している場所だけなんですけどね。さて、こっちです。」
宮弥が指示したのは、鉄の扉だ。
「これは学校の屋上に繋がっています。俺達、関係者にしか見えない扉で、関係者以外は開かず、触れる事が出来ない仕様になっています。」
「なるほど…極星院は関係者なんですね。」
「そうですね。兄さんに関連する味方は全員、あの扉に触れる事が出来ます。」
「私が関係者であるのは、必然的である。何せ、私は龍雅の正式な夫なのだからな!」
「聞くところによると龍雅先輩は、婚約者候補なんですよね。私達に関係のない婚約者候補が…」
「クッ…痛い所をついてきよる…あぁ、そうだ。私が龍雅以外の極星院が決めた婚約者候補は、どうでもいいと思っている。こんな仕来りが無ければいいのに…無ければお前達を龍雅と共に愛でる事が出来るのに…」
「じゃあ正式な妻は、私にもなれるって事ですよね? そうすれば、私と居られる時間が増える…他の女との時間が減る…」
「ならば、俺も参加させてもらいますよ。」
「いくら貴様らが私にとっても愛いとはいえ、そのポジションを譲らぬぞ…そこは我が席だ。ふむ、どうやら剣ヶ峰の婚約者候補を決めたいらしいな…正式なる妻を決める戦いを…」
(なるほど私が言ったことは正しいらしい…貴様が本当のかぐや姫である事を…)
「いいでしょう。ですが、今戦い、無駄な怪我を負っては、大会に支障が出る。それに梨奈は圧倒的不利だ。公平な戦いでなければならない。」
「了解した。では戦いの内容は考える。後に、ハーレム全体に情報を伝える。奴らにもチャンスをやらねばな。」
「わかりました。」
「おい早く行くぞ。」
龍雅がそう言うと、三人は「はーい」と言い、龍雅の後についていく。
四人は扉を開けると、そこは、屋上の出入り口のすぐ横だった。
後ろを見ると、フェンスとフェンスの間に柵の扉がある。
この柵の扉は、関係者以外は誰も見えないし、触れる事も出来ないし、開ける事も出来ない。
たとえアームズ人でさえも、神が設計した隠し扉を開ける事は出来ない。
龍雅達は、教室に向かう途中、階段から奈々は現れ、龍雅に抱き着いた。
「龍雅君!」
「おはよう。奈々…今日も可愛いな。」
「それよりもその女は誰なの? ちょっと龍雅君の匂いが強く感じられ、そして龍雅君からあの女の匂いが強く感じるんだけど…」
奈々の手から、刃が伸びる。
「あの奈々先輩? 龍雅先輩が困っているから話してくれませんか?」
梨奈は、奈々の手を強く握り、強い災厄を奈々に齎す。
「後輩ちゃん? 痛いからやめてね…やめないと殺すわよ?」
「逆に奈々先輩が殺されちゃいますよ? 私、私を殺そうとした人間を能力で殺してきましたから」
「へぇ…なら相手が悪いわ…」
奈々は、そう言って龍雅から離れ、梨奈は奈々から離れると、奈々は能力を応用して自分の体を治癒した。
(私がこの能力を持っていなかったらどうなっていた事やら…あの子侮れないわ…私と同じような愛を龍雅君に向けているわね。いずれ脅威になるかもしれない…)
「奈々、貴様に正室になるチャンスをやろう…後にルールを説明するが、参加するか?」
「参加するわ。そして私が一番になる。そして貴方達から龍雅と触れ合う時間を極限にまで奪う」
「変わってはいませんね。奈々は…」
「少し待て、俺の意志はないのか?」
「「「「ないです」」」」
「あっ、そっかぁ…是非もなし。因果応報、でもそれでもいい。頂点に立ちたいなら俺の為に戦え。我が愛しき者達よ。何で争うかは知らないがな。さて、梨奈…また家で会おう」
「ちょっと待って、龍雅君、梨奈って龍雅君の家に住んでいるの?」
「そうだけど…」
「許せない…私を差し置いて、龍雅君の家に…」
「ごめんって…」
「じゃあ龍雅君、今度私の家に泊まりに来てよね。一人で」
「あぁ、わかった。」
龍雅は、奈々と奈々の家に泊まる約束をした。
「じゃあ梨奈、またな。」
「はい! 先輩!」
梨奈は、そう言ってその場から立ち去っていった。
「朝からモテモテだな。龍雅」
「おう、虎太郎。貴様こそ何もしていないのに、自然とモテるではないか。やはり貴様も主人公体質というものだ。」
「主人公体質か…」
「さて、さっさと入ろうぜ教室に、ここで立ち話していたら、他ら奴らに迷惑になるからな。」
「まぁ、そうだな。」
四人は、2Gの教室に入っていった。
龍雅達はいつものようにいつもの場所で、話している。
「さて、明日から東京大会だ。準備は出来ているか? 虎太郎。」
「あぁ、出来ている。お前から貰った能力者の過去データを見てきたから過去の大会で出た選手の能力は全て使えるようになっている。」
「そうか…なら問題はない。奈々、紗里弥、宮弥の方はどうだ?」
「ちゃんと鍛えたわ。」
「私は、まだ力が解放されていない。」
「俺は、いつも通りです。ただ敵を倒せばいい…」
「よし…次の日が楽しみだな。」
一方その頃、梨奈は…
「り~な」
「芽衣…よね…どうしたの? 急に」
「いじめが無くなったから時間を止めずとも話す事が出来るなんて嬉しい。ごめんね。助けてあげられなくて」
「いいの。芽衣も怖かったんだよね。」
「うん…所で、龍雅さんの家から出て来たけど、もしかして龍雅さんと付き合っているの?」
芽衣は、興味津々な表情で梨奈に聞く。
「う…うん…そうだよ。」
「やっぱり!」
「芽衣にも好きな人っているの?」
「私のお兄ちゃんよ。」
「虎太郎先輩が?」
「そうよ。でも、兄妹での愛に何か問題でも?」
「いいえ、今朝、宮弥先輩と龍雅先輩が…」
「なるほど…梨奈は、本当に格闘大会に出るの?」
「出るよ。それが龍雅先輩への私なりの恩返しだと思っているの。芽衣は何に出るの?」
「障害物リレーね。」
「なるほど、リレーは男女分かれていないから龍雅先輩と一緒に出る事になるね。」
「え? どうして?」
「どうもリレーのアンカーが怪我をして…」
「なるほど…じゃあチームの命運は龍雅さんにかかっているって事ね。」
「でも、龍雅先輩なら大丈夫。龍雅先輩は私にとっては最強の存在なんだから」




