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不妊

作者: 暴走ブロガー誠壱

暴走ブロガー誠壱ワールドへようこそ

私達は子供を授かれない。


私達夫婦は天の悪戯ともとれる苦行を強いられている。


原因不明不妊


私は41歳。旦那は43歳。


遅蒔きの出逢いではあったけれど当時の私はこの人に運命を感じた。


この人と一緒なら…



お義父さんにも逢う度言われます。


「早く孫を見てみたい」


と。


私も孫を見せて親を安心させたいという気持ちもあります。


ですが、授かれない。


それが苦しくて…辛くて…


何で私がこんな目に会うんだろうと枕を濡らした事も多々ありました。


旦那も一緒に泣いていました。


泣いて悔やんでもどうにもならない事は分かっているけれど…

やっぱり辛いものなんです。



悩んでいた私達に縁あってか

養子を迎える機会が設けられました。


名前は【ユメト】


ユメトはとても無口な子でした。


「今日からはこのお家を自分の家と思ってね。」


「………はい。」


「お腹空いてない?良かったらこれから私と夫とユメト君3人でご飯食べに行かない?ユメト君の家族の仲間入り記念として!どう?」


「………はい。」


「セイイチ君は何か食べたい物ある?何が好きかしら?」


「……………」


「緊張してるのよね?分かった!出前にしましょう。まずはお家の雰囲気に慣れる所から始めましょ。」


「………はい。」









この時は私も気付かなかった。


ユメトは普通の子供とは違っていた。






まず排泄を一切しない。

一緒に生活してみて気付いたがトイレに行くのを見た事がない。

他の誰かがトイレに行くのなんて普通意識等しないもの。



排泄をしないのは聖者かゴキブリ位である。

人間であれば通常あり得ない。



そして養子になる前の素性を一切明かそうとしない。

明かそうとしたがらない。



ユメトに私がしつこく問い掛けているのを見て

旦那はいぶかしげな顔をする。



旦那は仕事で昼はいない。

昼は家に私とユメトの2人。


「学校早く決めなきゃね。ユメト君。」


「………はい。」


「ここなんかどうかしら?このお家からも近いし、ここにしましょうよ。」


「………はい。」


「まだ緊張してるのかしら?」


「…………………」



素っ気ない子というか…

一切笑わない子なのよね。



私は旦那に相談する事にしました。








旦那が仕事から帰ってきました。


ユメトは?


上で寝てるのかしら?

丁度いいわ。ユメトがいない隙に旦那に相談しよう。


「ねぇ、あなた。」


「ん?どうした?」


「ユメト君の事なんだけどね…」




「……またその話か。」



旦那は大きく溜め息をつきました。


私は何度もユメトの話をしたつもりはなかったんだけど……知らず知らずの内に話題にしてたのかしら?



「そうなの。今日の昼にね。ユメト君の学校を決めようと思っていたら、ユメト君素っ気ない返事しかしないの。学校自体嫌なのかしら?」




旦那は言いました。



「ユメトの学校………か…どこだっていいだろう。そんなもの。」



「どこだっていいだろ、はないじゃない。大切な家族の事なのよ?」



「はぁ…」


「じゃあな、言わせてもらうけど…」




























「ユメトって誰なんだ?」




「え?」



「あなた何を言ってるの?ユメト君…」


「ユメトなんて人間はこの家にいない。」


「え?」


「最初からお前と私。2人だけだよ。」


「え?」



「病院に行こう。最近独り言が多いと思ったらそういう事だったんだな。」


「あなた…何を言ってるの?ユメト君は昼間私とずっと家にいたのよ?今だって上で寝てる…」


「ユメト君!?ねぇ!ユメト君!」




「もうやめろ!ユメトなんて人間はいないんだ。お前の幻覚だ。」


「まさか…そんな…だって…」





違う。



旦那が嘘をついているんだ。



ユメトは確かにいる。存在する。


でも…何でそんな嘘を?







私は思い出した。


最近、生命保険について旦那から色々と聞かれていた事を。

何でそんな事を?と少し疑問に感じていたから覚えていた。



生命保険

実在するユメトを幻覚と言い張る夫



この2つの符号が意味する答えは……





生命保険金狙いの動機作り




幻覚が見えている異常な妻をでっち上げ

殺害するつもりなんじゃ……








「少し落ち着こう。座って。珈琲でもいれるよ。」



「嫌よ!飲まないわ!」



「病院に行くにも少し落ち着いてからの方がいい。」



「ユメト君!いるんでしょ!降りて来なさい!」



「もうその名前を呼ぶのはやめなさい!」


「やめて!腕を掴まないで!離して!私に触らないで!助けて!誰か!ユメト君!誰かぁ!!」




















「…もう大丈夫です。暫く安静にしていれば大丈夫でしょう。」


「はい。ありがとうございます。原因は何だったんでしょうか?」


「恐らくは不妊による極度のストレスと精神的疲労により自我が保てなくなり幻覚が見えてしまったのでしょう。統合失調症。精神障害の1つと考えられます。」










…嘘だ。










旦那と医者が嘘をついているんだ。








ユメト君はここにいるんですもの。










ねぇ、ユメト…君…

伝えたい事なんてない。

伝えたいという気持ちは伝わらなかった時に毒となる。

でも本当は伝えたい。それは僕や貴方が人間だから。

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