第八十八話
羊の顔をした化物は一目で悪魔だとわかった。
「我はバアル、貴様らはここで散る運命なのだよ。」
まぁ、自信があるのか自ら名乗ってくれた。その時神威が前に出た。
「ここは任せてもらうぞ。こいつは俺が片付けなければいけない。」
そう言うと神威の眼の色が青色に変わり体は炎に包まれた。その炎の中でも神威の青い目だけが光っていた。
「お前は…スルト?!」
驚くバアルに目もくれず無言で襲いかかる神威。
これが神威の正体だった。神格霊の序列一位を絶対的な力で獲得し維持し続けてきたのは彼が神格を持ちながら悪魔も宿していたからだ。祖父の話によると三代目の弟は悪魔と契約し死んだ。そして彼の息子は悪魔の血を半分受け継ぐ形となったそうだ。
この話は神楽の闇として外部には一切出ず頭首になる人のみが知っている事実なのだ。そしてその彼の息子が神威の先祖となるのである。
悪魔の血は絶えることなく今もどこかで続いているそうだ。
神威が纏っている炎はバアルの攻撃を一切通さなかった。神の力と悪魔の力をあれほどまでに上手くコントロールできるのは神楽の血筋も関係あるのだろ。なにより戦闘が始まって数分で結果は見えていた。




