第八十一話
霊界で何が起こっているのか知らない僕らは黄泉で絶鬼と戦っていた。
「見せてやるよ、神格霊序列上位3位に与えられている力を。」
そう言って絶鬼は何やら呪文を唱えだした。すると絶鬼の体に鱗のようなものが生えてきた。更に切断したはずの腕が再生し、額の真ん中から角が一本生えていた。
「なるほど、鬼の遺伝子か、厄介だな。」
「紫苑、何呑気にしてるの!ヤバイよあれは…」
「問題ない。涼音、お前の本当の力を使わせてもらうぞ。」
「え、どういうこと?」
状況がわからずおどおどする涼音。
「お、ついにやるのか。暴走した時は俺らで何とかするから遠慮するなよ?」
「あぁ、わかったよ。頼んだぞ希莉。」
そう言って僕は[新装 グングニル]を具現化する。
「今度は纏いじゃなく俺自身が神になる。」
「え、待って紫苑、そんなことしたら体持たない…」
「大丈夫だよ涼音、紫苑の力の凄さは俺らが知ってる。」
「また私だけ知らないのー」
「やるぞ。」
槍を地面に刺して黒い御札を取り出す。呪文を唱えると御札から黒い霧が発生し僕を包んだ。更に地面に槍を中心に魔法陣が描かれそこに雷が落ちた。その雷によって黒い霧が晴れた。
「貴様、何だその姿は。その姿はまるで…」
「あぁ、そうだ。オーディンって言えばわかるよな?前々から気になっていたんだ、元々の名前がカーリーなのに新装はそれに由来しない武器だった。これはおそらく何者かによって本来の力が封印され別の神が涼音の体に降ろされたのではないかってね。」
「誰がそんな封印を?」
「わからない、だが、その封印は既にこじ開けた。」
「くそがぁ、相手が神とか聞いてねぇぞ」
「悪いな、今言うよ。お前の相手は神だ。ってね」
その時絶鬼が咆哮した。衝撃波が僕らをふっ飛ばした。
「神だろうがなんだろうがこの際どうでもいい。ぶっ倒す。」
「いいねぇ、やろうぜ。本気の殺し合いを。」
僕と絶鬼は同時に地面を蹴り正面からぶつかり合った。




