第六話
さっきまでの苦労は何だったのか…
さっきとは違い悪霊の動きがはっきり見えた。僕の後ろをとったと想い込んだ悪霊は容赦なく突っ込んできた。
思った通りだ。
僕はそこで跳躍しヤツの頭上から一気に切り込んだ。しかし真っ二つにはしない。動けないように3枚ほど御札を使って無力化した。あとは神社の人に任せれば浄化してちゃんと成仏させてくれるだろう。
「やっと一件落着かー、なんか疲れたー」
そう言いながら憑依させた希莉を解除して涼音に結界を解くように指示する。
すると…
ピピピピピピ…
あ、この音は…
そう二軒目が発生したのだ。急いで現場に急行する。 流石にここから走るわけにもいかなかったので神社の人に車でおくってもらう。
「それにしてもさっきの奴いつものより凶暴じゃなかったか?」と希莉が言う。
僕もそう思っていた、雨のせいではないことは確実だがそれ以外の理由が思いつかなかった。ただわかったのはこれから何か大きな出来事が起こりそうな気がしたことだ。
移動中の車の中で仮眠(一時間程度)をとり現場に到着する。今回の現場は先ほどより酷かった。
暗い路地裏には負傷した神社の人や依頼を受けた同業者の人たちが15人ほど倒れていた。
そしてその人倒れた人々の先に日本刀を持った一人の男が立っていた。僕は全身が危険信号を出しているのをすぐに察した。
こいつはヤバイ…
今まで祓ってきたやつの誰よりもヤバイことは目に見えていた。おそらく先ほど僕が戦ったやつよりも数倍は強いだろう…
男の目は赤く血走り服や顔には返り血が着いていた。
「なぁ、このままじゃ俺ら確実に死ぬけどどうする? って俺はもう死んでる身だったけどー」と希莉、
「私…怖いけど戦う…」とフードを深くかぶって震えている涼音、
「んじゃ、全力でやりますか… 神主さん希莉の力を解除しますね。」と僕は神主さんの許可を取るのではなく決定事項を伝えた。
彼らは物を霊媒として取り憑くとき力の70%ほどを制限され使えなくなるのである。それを解除すると術師(ここでは僕)がその力をコントロールするだけの能力がないと力は暴走して術師の精神をその霊に乗っ取られてしまうのである。
しかし封印が解かれて正真正銘100%の力を使える僕なら彼らのリミッターを外して本来の力を使えるようにしてもコントロールするのは容易だろう。
「この事態だ、仕方ない。ただし暴走したら私は君を止めるために君の命を奪うかもしれないがいいね?」
そう言って神主は僕に全てを託してくれた。