第四十話
「これで堪忍しましたか?」
なす術もなく地面に膝をつくイザナミに向って僕は言う。
「あぁ、妾の負けじゃ。[ヤサカニの勾玉]は持って行くがいい。……ん?勾玉がなくなっているじゃと?」
慌てる一同。その時どこからともなく声が聞こえた。
「勾玉は私がいただきました。諦めてください。」
あぁ、この声聞いたことあるぞ…
「その声もしかして白狐とかいう神格霊か?」
「よぉ、半神。勾玉は俺がもらっていくからおとなしくしといてくれ。」
「悪いんだけど大人しくしろと言われて大人しくしてられる状況じゃないからその要求には従えないね。」
そう言いながら一気に距離を詰め斬りかかる。白狐は勾玉を懐に隠し二本の銃剣で僕の剣を受け止めた。ように見えた。しかし実際剣は白狐の横腹をかき切っていた。
[クサナギの剣]防御不可能の刀。他にも色々能力があるようだ。
「まだやる?それとも大人しく勾玉渡して帰る?」
「冗談言うなよ。俺がこんなもんで諦めるかよ。」
そう言って発砲してくる。しかし頭を狙っていた弾は仮面によって弾かれた。
「何もんだよお前、何が目的だ、支配か?破壊か?」
「僕の目的は現世を守ること。」
「それだけのためにこんなとこまで来たというのか?」
「それがなにか?」
「正気かよ」
「イザナミ様ー勾玉もらっていく代わりにこいつ好きにしていいですから。」
そう言ってイザナミの方を見ると嬉しそうな顔をしていた。遊び相手が増えたからだろう。
「ま、まて俺はこんなところには残りたくない。」
傷をかばって逃げようとする白狐を瘴気の紐で捉える。そして懐に隠された勾玉を回収する。
「それじゃ、僕らはここで失礼します。勾玉、いつか返しに来ますから。」
そう言って黄泉と霊界を繋ぐ門へ向かった。
帰り道はひたすら飛び続けた。数時間後門に着いた。
「三種の神器を全て集めた人なんて初めて見ましたー。」
「確かに、長いこと管理者やってるけど見たことないです」
3つの世界を維持する力が今、僕の手に揃っていると思うと確かに凄いことだ。
「早くあの棺の男の正体を暴かなくては…」
そう呟いて僕はまた霊界へ帰っていった。




