第三十五話
狩場の山は予想以上に暗かった。木々がほぼ隙間なく太陽光を遮断している。
「これじゃあ昼か夜かわかりやしない。」
「僕は時計持ってるからいいけどあのおじさんは大丈夫なかー?」
「長年ここで狩りをやっているようだったので大丈夫と思うよ。」
「それじゃあこちらも仕事しますか。涼音、憑依。」
僕はアーチェリーに涼音を憑依させ[アルテミスの弓]を呼び出した。
「これ反則じゃないか?」
と希莉が言う。
「なんでもアリと言ったのはあのおじさんだよ。」
と僕は答える。
そう話しているうちに後ろの茂みで何かが動いた。茂みの間からこちら見る黄色い目。この気配、多分熊だな。
僕は思いっきり跳躍し木の上に登った。木の上から最初の獲物を狙う。そして思いっきり矢を放つ。自動追尾の矢は獲物の頭の真ん中に綺麗に刺さった。
「やっぱり熊だったか。いきなり大物だな。」
「これー持って運ぶのか?」
「流石にそれは重いからここを拠点にして捕ったものを集めよう。」
仮拠点が決まったのでまた獲物を探す。すると今度は鹿の群れが水を飲んでいた。
「4匹か、涼音いける?」
「余裕ー!任せなさい!」
「そんじゃ、よろしく!」
4本の矢がまるで生き物のように飛んでゆく。目を瞑っていても当てれただろう。事実僕は方向を合わせているだけで細かい調整は全て涼音がやってくれている。
「相変わらず正確な射撃だな」
「希莉も見張りご苦労さん」
「なんか僕だけなんもやってない感すごい…」
「大丈夫、ちゃんと働けてる!」
「ならいいけどー。」
「ほら、あそこに鳥が!早く!」
涼音の言う方向に矢を放つ。見事に心臓を一突き…
狩り開始から4時間30分経った。運ぶのに三往復ぐらいしないと運べないぐらい集まった。
「さて、運ぼうか。希莉、涼音手伝ってねー」
「あいよー」
「はーい」
運び終わった頃には丁度時間になった。小屋より高く積まれた獲物を見ておじさんは腰を抜かしてしまった。
結局今日の稼ぎは2ヶ月毎日バイトすると稼げる金額と同等だった。おじさんはとても喜んでいたようなのでやった甲斐があった。
宿に帰り今日の稼ぎで黄泉へ行く用意を整えた。そして明日いよいよ黄泉へ[ヤサカニの勾玉]を回収しに行く。
この時まさかあんなことになるとは僕らも思ってはいなかった。




