第二十五話
真昼の草原はとても暑かった。日差しを避ける木陰もないからだ。直射日光に晒されて体力がどんどん削られてゆく。
「こんなことだったらもっと鍛えとけばよかったなー」
「今更そんなこと言っても仕方ないだろー。ほれ、さっさと歩け!」
「僕も君らみたいに飛べたらいいのになー」
「それは無理だなー諦めろ」
希莉達は僕の後ろをふわふわと飛びながら追いかけてきた。こういう時が彼らのことをほんとに羨ましいと思う瞬間だった。
動物の気配すらない道をひたすら歩くこと半日、ようやく巨大な壁が見えてきた。どうやら都市部は壁で囲まれているようだ。
「これはーまるで要塞都市だなー」
「壁破るのってあり?」
「「「ダメに決まってるだろ!」」」
希莉がまさかの発想に至ったので三人同時に同じことを言ってしまった。
やっと都市部の入り口にたどり着いた。門番には森の集落から来た、と言えば普通に通してくれた。
「さてと、とりあえず宿を探すか。」
街を歩きながら宿を探していた。すると通りの外れにちょうどよさそうな宿があった。
「すいません、部屋って空いてますか?」
僕がそう聞くと店の主人は珍しそうに
「こんな錆びれた宿にわざわざ来てくださるなんて、何日でも泊まっていって下さい。朝晩飯付きで一日1000円でどうです?」
何日でも泊まっていいそうだ、そして飯付きである、さらに安い、即決だった。
宿に荷物を置いてとりあえず街へ出た。街は現世と同じくらいにぎわっていた。この世界の食べ物は基本的に現世と同じだった。野菜や果物、肉、魚なんでもあった。
「さて、巫女さんを探すのもあるがあくまで僕らの目的は神格霊を倒し侵略を止めることだ。でも神格霊ってどこにいるのだろう。」
「まぁ、とりあえず情報集めから始めましょーかー」
「えーなんで涼音そんなに乗り気なの?俺あまりやる気でないわー」
「こら、希莉。主のいうことぐらいちゃんと聞きなされ。」
いつ話しても飽きないな、このメンバーは。そう思いながら今日はもう遅いので宿にもどった。
その夜、僕はまた不思議な夢を見た。倒れている神格霊、怯える巫女、上空に開いた黒い穴、そして棺桶を持った一人の男。
一体あの夢は、なんだったのだろう。もしかしたらあの棺桶を持った男が本当の倒すべき相手なのだろうか。ただ一つわかるのはこれがただの夢ではないとこ、それだけだった。




