第二十四話
その村の上空500メートルに1羽のカラスが飛んでいた。そしてその目を通して先ほどの騒動の一部始終を見ている男がいた。
「ふむ、この男中々の手練だな。さてはこの世界の人じゃないな?何者だ?」
独り言をぶつぶつ呟いていた。この男、神格霊の一人『黒鴉』名前の通りカラスを操る。
霊界に入って数日で目をつけられたのも知らずに僕らは家の中でのんびりしていた。今は歩き疲れた身体を癒やすことが最優先事項だ。
「風呂とかないのかな?あったら行きたいなー」
「俺も久々に風呂入りたいわー」
「お風呂…懐かしいですねー」
「主…そんなに呑気にしてられんぞ。」
「え?紫紅どういうこと?」
「さっきから妙にカラスが増えてると思わんか?」
「たしかに、村の囲いの上にとまってるカラスの数が増えてるよね。」
「おい、それヤバイやつじゃねー?」
「希莉ー人事じゃないよー私達も関係あるのよー」
相変わらず希莉と涼音はマイペースだ。カラス…なんか不幸を運んできそうで縁起悪そうだなー。
外の様子を時々観察しながら家で待機していると夜になってしまった。今のうちに村を出よう。
村を出てしばらくするとカラスの姿はもうなかった。そして村から出たのも気づかれていないだろう。戦闘服の能力、効果付与によってステルスを付与して姿を消していたからだ。
「今日はこのまま野宿だな。」
僕らがボソッと言うと涼音と希莉があからさまに嫌な顔をした。
その夜は交代で寝ながら夜を明かした。涼音の結界があったから安全だったが念には念をということで見張りをしながらだった。
運良く襲ってくるものはいなかったがしばらく村や集落は避けることにした。
そして僕らはまた都市部に向かって歩いて行くのだった。




