第二十話
いよいよ出発の日がやってきた。流石にみんな緊張していた。荷物を持って家を出ると神社の人達が見送りに来てくれていた。
「くれぐれも自分の命を大切にするんだよ。」
そう言われた。なにか言おうと思ったが緊張のあまり言葉がでず一礼だけして門へと向かった。
門のある神殿の周りには多重結界が張れており向こうの世界から来たものを絶対に通さない仕組みだった。ここまで厳重ならなんとか耐えれるだろう、そう思いながら僕は結界の中へ入っていく。
出発の時間だ。門を封鎖していた分厚い鋼鉄の扉が開き僕らの目の前に門が出現した。
「いってきます。」
そう一言だけ言って僕らは門に飛び込んだ。
門に入って数分ずっと暗い道が続いていた。おそらくここは現世と霊界を繋ぐ道なのだろう。それにしても長い。さっきから[ヘルメスの靴]を使って普通より高速に移動しているのだが一向に霊界の扉が見えてこない。
その時、数人の悪霊達が僕らの前に現れた。おそらく盗賊のようなものなのだろう。希莉の[雷刀 イカヅチ]で一網打尽にしてやった。
また数分走り続けるとやっと扉が見えてきた。しかしその扉の前には二匹の巨大な鬼が、おそらく門番だろう。
「準備運動にしては上等じゃねーか」
「よーし、やるおー!!」
「鬼か、久々に見たな。」
「三人共、全力でやるよ。憑依!」
紫紅はローブに涼音は盾になったのだが希莉の刀が禍々しい瘴気を纏っていた。
「希莉、どうした?調子悪いの?」
「いや、逆に力が溢れてくる。」
その時、僕はふと思い出した。希莉の持つ妖刀シリーズの中には二本の邪悪な刀がある。おそらくこれはそのうちの一本が目覚めたのだろう。
[呪刀 禁忌]
その名の通り呪いの刀、そしてその形状は刀というより太刀に近い。
「鬼相手にはこれぐらい必要だろ?」
自慢気に希莉が言ってくる。なにはともあれこれは苦戦しないだろう。
飛びかかってくる鬼をかわし頭から縦に真っ二つにしてやった。戦闘服の付与の効果も問題なさそうだ。
しかし鬼はそんなにすぐに倒れてくれなかった。真っ二つにしたはずなのに再生したのた。おそらく核を潰さないと死なないらしい。ここでこそ呪刀の力の見せ所だった。
雄叫びをあげながら乱打を打ち込んでくる鬼をかわして呪刀で切り傷をつけてゆく。そして地面に刀を刺して呪文を唱えると、刀身の模様が動き出し地面を這ってつけた傷口に入ってゆく。
そう、この刀は炎刀や雷刀のように敵の外部を攻撃するのではなく内部から壊す武器なのだ。これでどこに核があろうが関係ない。すべて食い尽くせば終わりである。
悲鳴をあげながら倒れる鬼、その時グジャッという鈍い音とともに鬼の体が溶けだした。核を潰したのだ。
そして僕は巨大な扉の前に立った。扉の向こうに霊の反応はない。
「よし、ここからが本当の戦いの始まりだ。」
そう言って僕らは扉の中へと姿を消すのであった。




