第十七話
手に握られている銀の指輪を指につけると僕を包んでいた黒い箱が砕け散った。
「封印を解くと人間じゃなくなるってどういうことだろう…」
「おそらくお前の力の本質は人間のものじゃないってことだよな…」
「わ、私は君がどんなのになろうとついていくよ!」
「……」
何故か紫紅だけは黙っていた。おそらく、僕についてなにか知っているのだろう。
「いつかは解かなければいけないのなら今解くか…」
僕はボソッとそう呟いて指輪に気を込める。すると指輪は鍵へと姿を変え目の前には鍵穴が出現した。
「解錠」
3つめの封印に入っていたもの、それは僕の前世の記憶とその人の能力だった。そしてその代償に僕の右目は赤く変色し、右の額からは角が生えてきた。初めは鬼の因子か何かと思ったが白狐を見るとすぐに解決した。
「お前、人間のくせになんで神格霊だけが持つ角を持っている?!しかも片方しか生えてないなんて聞いたことないぞ?!」
「そんなの簡単だ、僕が半分だけ神格を持っていただけだよ」
「馬鹿な!半分だけ神格を持つなんてありえない。」
「現に今、それが君の目の前にいるじゃないか。」
「認めん、人間ごときが!」
そう言って彼は去っていった。
とりあえず一難は去った。しかしまた一難…
目と角をどうしようか…
悩んだ結果、目は特別なカラーコンタクトで戦闘中以外色を変えて角もホログラムで見えないようにした。科学力ってすごいよな…
彼が去って数日、特に動きはなかった。しかしいつかは神格霊達がこちらの世界を侵略しにくることはわかっていた。
白狐が言っていたことが本当ならこのままでは関西地区をはじめ日本全国が霊界になってしまうということだ。なんとしても止めなければいけない。
しかし彼らと同等に戦えるのは僕しかいないのも事実だった。そこで僕は思いついたのだ。
「こちらの世界で待っていて一回一回来たところを迎撃するぐらいなら僕が向こうの世界へ行ってすべて討伐してしまったほうが早いじゃないか。」
そしてこの提案は本部長によって許可された。霊界へ行くのは僕、希莉、涼音、紫紅の四名だ。他の人たちは門の前で待機し補給物資を輸送する。
出撃は二日後、それまでつかの間の休息が与えられた。
この日休みを利用して僕らは向こうで使う御札を新調しにきた。人気のない路地裏を通りある場所で止まった。そこは何もない行き止まりだった。しかしある合言葉を言うと目の前に店が現れた。店全体に陰陽術がかけられた御札の専門店だ。
店主と色々交渉した結果、強力な御札を手に入れることができた。
次は何しようか…そう思いながら僕は街へ出るのであった。




