第十五話
突如消滅した街、そして変わりに大きな神殿が出現した。
警備にあたっていた除霊師達はすぐに周囲を封鎖して結界を張った。前回の事件があったせいか本部の対応はすごく早かった。運悪く現場の近くで買い物していた僕らもすぐに急行した。
「街が…消えてる…」
現場に到着した人々は口を揃えて驚いていた。今回は前の僕のように死者は出なかったのが幸いだった。
「この神殿の素材、霊子だ。多分一般人には何も見えていないと思うぞ。」
っとすぐに紫紅が分析する。流石は僕らより大人なだけあって冷静だった。
霊子とは霊を構成する言わば分子や原子のようなものである。僕らのような霊感がある人はこれを目視することができるのだ。
こりゃまたしばらく監視任務だな…そう思いながら僕は手元の端末で第四管区全域に避難勧告を発令した。
停滞状態が続くこと2日ついに状況が動いた、神殿から何人かの取り巻きを連れて出てきたのは背中に二丁の銃剣を背負ったいかにも危なそうな霊だった。
僕が驚いたのはその取り巻きだった。そう、この前僕の身体を貫いた奴と同じ装備なのである。要するにあの神殿の向こうからやってくる兵士であろう霊達の最低レベルが奴らなのである。そうなると銃剣を背負った彼はどれだけ強いのか…
僕が一人で考えていたその時、彼が銃剣を抜き発砲した。近くで警戒にあたっていた隊員が倒れる。
「あいつらは間違いなく敵だ、遠慮なくやるよ」
そう言って僕は三人に指示を出す。
希莉を二枚の御札に分けて憑依させる、[炎刀 焔]と[雷刀 イカヅチ]二本の妖刀を同時に具現化する。
この双刀を名付けるなら[双刀 雷炎]ただ二本を同時に使うだけだが名前をつけたほうがやる気が出るものだ。
涼音はいつも通り御札に憑依させ[イージスの盾]ではなく靴に憑依させて二つめの神話シリーズの武具、[ヘルメスの靴]を具現化する。
[ヘルメスの靴]は空だろうが海だろうが関係なくどこでも立ったり高速に移動できたりする。
紫紅はコートに憑依させて[冥界のローブ]へと姿を変えた。
おそらくこの場で一番力があるのは僕だろう。他の隊員には避難してもらった。
突然目の前を弾丸がかすめた。なんとか紙一重でかわせた。しかし今の反応速度ではまだ遅すぎた。
銃相手なら懐に入り込めば勝ちと思っていたがそうでもなかった。やはりかなりの手練だった。二つの封印を解いた僕でも全く歯が立たない。
「貴方、一体何者ですか?」
僕がそう尋ねる
「俺は神格霊の一人、白狐。神格を与えられし霊界の守護者。」
白狐と名載った彼はあっさりと身分を教えてくれた。
「えっとーその守護者さんがなんでこちらの世界に?」
「霊界がこちらの世界に広がりつつあるので原因を排除しにきた」
「その原因とは?」
「わからん、しかし我々神格霊の総意によりこちらの世界を霊界にしてしまえば解決する」
あっさりと侵略宣言された。
「こちらの世界は渡しません。その神格霊を全員倒せば侵略は止まるのですよね?」
「そうだな。しかし俺達は神格を与えられた霊。人間ごときに倒せるわけがない。」
「なら、最初に倒されるのは貴方ですね。」
そう言って僕は未知なる脅威と対峙する。
これが今後長く続く戦いの最初の一戦なのだった。




