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兄妹、電話。

新しい出会いというのは、それがどんな人であろうと嬉しいものだ。

不思議な人や、少し威張った少年、裏のある少女、頭の良い人、悪い人。平凡な人や非凡な人。みんな仲良くなれたらいろいろと見えてくるだろう。

悪い人が実はすごく良い人だったり、その逆だったり。

僕の目の前でいなくなった友達は本当に良い人だった。

僕にたくさんのものをくれた。

彼と一緒にいれば独りになることがない。彼と一緒にいれば僕は楽しい。彼と一緒にいればどんなことでさえできる気がした。本当に最高の友達だった。


美咲さんに会った次の日の朝。僕はそんなことを考えていた。美咲さんに出会わなければこんなこと考えなかっただろう。友達が死んだことに怯えながら朝を迎えていたのだろう。


「兄さん、起きて。」


部屋の向こうから声が聞こえる。

妹の声だ。妹は勢いよくドアを開け、大きな声でこう言う。


「兄さんっ!起きてっ!あーさーだーよーっ!」


「起きてる。それと未来。兄さんじゃなくてお兄ちゃんだ。」


「気持ち悪い。」


冷たい視線に冷たい声。僕の妹はかっこいいというか美しい感じだ。僕より身長が高くスタイルも良い。顔もキリッとしていて長い髪が美しさを際立たせている。まだ高校一年生ということもあり、少し子供っぽさもあるがそれがまた良い感じだ。


「兄さん。ちゃんと学校行ってね。あと朝ごはん出来てるから。」


「わかった。ありがとう。」


未来は学校には行け、というけど起こしてくれたりいろいろ話してくれたりする。

ふざけあったり真剣な話をしたり、ごく一般的な兄妹だろう。


「兄さん。私、学校に行ってくるから。ちゃんとご飯食べてね。」


「わかったよ。行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


行ってきます。という挨拶を終えた未来は僕の部屋から出ていきバタリ、と部屋のドアを閉めた。

もちろん僕は大学には行かない。そもそも半年も行ってないしやめるしかないだろう。いまさら講義を受けたって理解できるはずがない。

昨日遊んだせいで僕は疲れている。

外に出る気にもなれず、いつものように部屋でゴロゴロしていよう。


家から逃げたい、という気持ちで開けた扉も今日は重たい。

半年も引き篭もっていれば、外には出られなくなる。徐々に徐々に扉は重くなっていく。昨日扉が開いたのはたぶん偶然なのだろう。

きっと何かきっかけがあれば、とそう思っても外に出ない限りきっかけはやってこない。


そして昨日、逃げるように外に出たことによってきっかけはやってきた。

美咲さんだ。彼女はまた遊ぼう、と言ってくれた。少し辛いという気持ちもあったが、全て奢られた僕に拒否権などなく了承した。

日時などは決まっていない。このままでは奢られっぱなしだし、何よりもこれはきっかけだ。これを逃せばもう二度とないかもしれない。

そして、僕は少しの勇気を振り絞り携帯電話を手に取った。


------------------------------


私の居場所は一体どこなのだろうか。

私という人間は親に必要とされ産まれてきたのだろうか。性欲を満たすために行為を行い、そして何か失敗をしてしまい、堕ろすに堕ろせず産まれてしまったのではないのだろうか。私という存在は友人という存在になり得るのだろうか。

いくら考えても答えは見つからない。


私は何不自由なく生活し成長してきた。欲しいものは買ってもらえる。勉強だって運動だってできた。

人を惹き付ける容姿を持っていた。

男に苦労することもない。彼氏を作るためにギラギラ燃える必要などなかった。嘘だったとしても告白すれば付き合えた。悩み事は相談してもらえた。信頼されていたからだろう。

しかし、本当に信頼されていたのは私なのだろうか。私の言葉はちゃんと届いていたのだろうか。私の言葉は本当に私の言葉なのだろうか。


不自由なく生活してきた私は不自由のない生活が退屈だった。苦しかった。誰かに苦しみをわかってもらおうと思い、悩みを相談しようとした。でも、誰に相談していいのかわからず、私は苦しみ続けた。

だから、不自由のない生活に反抗しようと思った。

勇気のない私は朝からゲームセンターに行く、という意味のわからない反抗を思いついた。ガキのような反抗だ。だが、結果それが正解だった。


私は出会ったのだった。

悠太という少年に。不思議な少年だ。彼は私と同じ苦しみを持っている気がした。実際には違うものなのだろう。私とは比べ物にならない程の苦しみを彼は知っているのだろう。理由はわからない。教えてくれない。

でも、苦しみを知った彼なら私の苦しみをわかってくれるかもしれない。そう思うと居ても立ってもいらなれくなり私は無理矢理彼と遊んだ。私の自己満足のために。そして少しの希望を掴むために。


そんなことを考えていると私の隣に転がっている携帯電話が軽快な音楽を奏でながら着信がきたことを私に伝える。


彼からだ。


『もしもし、美咲さん。』


「もしもし、ゆーくん。何か用かな?」


『あの、また遊ぶという約束したじゃないですか。日時とか決めてなかったので決めておかないとな、と思って。』


「んーと、来週の土曜は空いてるけど、ゆーくんは大丈夫?」


『大丈夫です。』


私は間髪入れずに返事がきたことに少し違和感を感じた。ただ気にしても仕方ないので気にせずに話を続けた。


「じゃあ来週の土曜、11時に駅前に新しく出来たケーキ屋さんで待ち合わせ。」


『わかりました。じゃあ切ります。』


「うん。ばいばい。」


『あっ、一応全部奢るつもりでお金持っていきますけど財布は忘れないでくださいね。』


「わかってるよ。財布を忘れるのはゆーくんじゃないの?」


『うっ、忘れないように頑張ります。』


「忘れたら針千本飲ますからね。」


『やめてください。本当に忘れたら洒落になんないですから。』


「まぁ針千本は嘘でもそれなりのバツを与えるからそのつもりで。」


『なんですか、バツって。すごく怖いんですけど。』


「ゆーくんが忘れなければいいんだからちゃんと持ってきてね。」


『そうですね。わかりました。』


「じゃあまた土曜日に。」


『はい。また土曜日に。』


「じゃーね。」


『はい。それでは。』


プツッ。ツー、ツー。という音が電話の終了を告げる。決して長くはない会話。でも、少し楽しくて嬉しかった自分がいる。別に親しいわけでもない同い年の男の子との会話。


自分は非行もどきの理由をまだ言えない。ゆーくんも理由を言えない。もしかしたら言ってくれないかもしれない。

それでも、私は自己満足のため、ほんの少しの希望のために彼との仲を深め、理由を言い合える関係になれたらいいな、という淡い期待を抱かずにはいられなかった。


考えるシーンが多かったし今回も短いです。

投稿してから次の話を考えるので投稿ペース遅いと思います。

いろいろと矛盾している点や変なところがあったら指摘してください。

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