謎の携帯動画。
私は携帯を機種変更した。
機種は少し古いモデルである。
というのもこの携帯は中古ショップで購入したやつだからだ。
貧乏大学生の私にとってなかなか新作の機種は買うことができない。
だからといって携帯が壊れたままではいけない。
その時、あるリサイクルショップで中古の携帯電話が売られていることに気がついた。
見た感じ中古とは思えない綺麗な携帯電話だった。
私はべつにこれでいいと思い買ってきた。
家に帰るとすぐに携帯の電源をつける。
前の使用者が丁寧な人だったのか画面に傷とかはあまりついていない。
そして、問題なく電源はついた。
携帯を一通り操作して初期設定をする。
その時、あるフォルダが目にはいる。
それは動画を保存しているフォルダだ。
もちろん中古の携帯といってもデータはしっかり消去されていて、前の使用者の記録が残っているはずはない。
でもこの携帯には一件だけ動画が保存された状態になっている。
なぜか無性にその動画が気になった私は動画の再生ボタンを押した。
動画が再生される。
「アンダーミーダーアンダーミーダー!!!」
聴いたことのないお経を叫ぶ声が静かな私の部屋に鳴り響く。
どうやら、誰かの葬式のようだ。
画質が悪くて参列者の顔はよくわからない。
場面が切り替わる。
次に映し出されたのは青白い老人の顔だ。
でも何かがおかしい。
なぜならひたすら首が360度回転しているのだ。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
どんどん回転が速くなっていく。
「ア…。ア…。アッダ…。アダダッダ……」
首の回転速度が早くなるにつれて変なうめき声が聴こえてきた。
「ちょっと…。なによこれ…。気持ち悪い」
なんなのだ。この動画は??前の携帯の持ち主が撮影したんだろうか。
だとしたら趣味が悪すぎる。
首の回転はパソコンでも使って加工でもしたのだろうか。
私は動画を止めようとした。
止まらない。
何回ボタンを押しても動画が止まらない。
「アダダ…。アッダダ…アッッ…」
変なうめき声をあげながら老人の首が扇風機のように回転している。
「キャ…。もうやだ。なんで止まらないのよ!」
ボタンを連打した。
止まらない。
その時だ!!!
また葬式の画面になった。
お経を叫ぶ声が辺りに鳴り響く。さっきよりもお坊さんの声が大きくなっているような気がする。
そして、画面は徐々に棺桶に近づいていく…。
ゆっくり、棺桶の蓋が動く。
いない。棺桶の中には誰もいない。
「えっ!?何で中に誰もいないの?」
その時、後ろから誰かの気配がした。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
ぐるぐる…。
何かが扇風機のように回転している音が聴こえる。
私は怖くて後ろが見れない。
「アッ…ダダ…。ワしコノ棺桶ニ入らんとイケん……。アァァー!!」
地の底から響くような低音で老人はそう言った。
その後の記憶はない。気がつくと朝になっていた。
私はすぐに買ったばかりの携帯を捨てた。