第1話 突然の編入生
リアル優先なので投稿ペースは遅いです。
1ヶ月に1話、投稿できれば良い方かと。
(現在の目標週一更新)
末長く、暖かく見守っていただけると、非常にありがたいです。
それでは
世に存在する6柱の神
火の神 マルス
水の神 アーク
木の神 ジルフ
雷の神 ヴリム
風の神 ウラル
土の神 ザラフ
人は誕生した時、この6柱のうちいずれかの1柱の神から恩恵を受ける。人は1人1柱まで、この「神の恩恵」を受けることができ、その後生きていく上で、他の神から恩恵を受けることはないとされている。
ただし、伝説上では2つ以上の神の恩恵を受けたり、上記した6柱の神以外の神から恩恵を受けたりしている。が、あくまで伝説の上での話。
神の恩恵による力は『神授術』と呼ばれ、その量や質は個人差がある。その中でも、量や質が秀でている者を『神授者』と言う。
新たな出会いを終え、次の季節の一端を感じ始めるようになった頃、ここマーダルグス王国立神授者育成学校に、1人の男子生徒がやって来ていた。
この国では、満5歳から7年間を一般教育の義務教育とし、その後は専門分野の知識、技術を伸ばすために各個人に合った道を選ぶことになる。そして、この学校はその道の一つで、その名の通り、ここでは神授者を目指す者に、指導、育成を行う学校である。学年は5つで1学年150名前後。1クラス30名程度で飛び級、留年ありとなっている。
「はーい、みなさん。席について下さいね」
ここ3-Cの担任教師ジュリアン先生は、生徒に着席を促した。
「今日からこの教室で貴方たちと一緒に学ぶ、新しい生徒を紹介します」
教室内はざわめく。新年度を迎えて2ヶ月ほど過ぎたこの中途半端な時期に、新しい生徒が来たとなると、動揺が生まれて仕方ないだろう。
「入っていいわよ」
生徒たちが落ち着くのを待たずして、先生は新しい生徒に教室へ入ることを許可した。
すると教室のドアが開き、歩いて入ってくる。少年は教卓の横に立つと、生徒たちの方を向いた。
「イルギス・スクラードだ」
その新しい男子生徒は、そう名乗った。背丈は同年代の男子の中では高い方で、顔もイイ方ではあるが、鋭い目つきと低い声は、他の生徒に近寄りがたいモノを感じさせていた。
「じゃあ、あそこの空いている席についてくれるかな?」
そう言って、先生はドアから1番離れた後ろの隅の席を指差した。イルギスは黙って、その席についた。
「それじゃあ、1限目を始めるわね」
1限目が終了し、2限目までの休み時間。
教室の空気は妙に張り詰めていた。イルギスの存在感に圧倒され、他の生徒は彼の方を見ようとはせず、どこかぎこちない感じで、友人との会話等にいそしんでいた。
そんな中、1人の男子生徒が彼に話しかけた。
「よっ。俺はジーク・レイモルド。ジークと呼んでくれ。これからよろしくな」
空気が固まった。彼の勇気ある行動に心の中で賞賛を送ったり、危険な真似はやめてくれというような事を思う生徒がいるが、そんな彼等を含めたほとんど生徒が、次に起こる何かにおびえていた。
「こちらこそよろしくな、ジーク。僕もイルギスで構わないから」
みなが彼の方へ振り返った。彼は、先程とはまるで別人のようだった。暖かい眼差しと明るい笑顔。声色やトーンも明らかに変化していた。
「さっきとは雰囲気まで全く違うな。もしかして二重人格か何かなのか?」
ジークはそう訪ねた。その他大勢の生徒も同じことを一瞬考え、それと同時に聞くべきではない事だと思っていたので、ジークの怖いもの知らずに驚きを隠せなかった。
「えっと…まあ、そんなところかな」
イルギスの返答はどこかぎこちなく、曖昧なものだった。
「そうか。まあ、深くは尋ねないことにしとく。おっと、もう時間か。授業頑張ろうぜ」
ジークはそう言って自分の席に戻った。
「ふぅ。これで僕たちのことは、二重人格ってことでなんとかなりそうだね」
「ああ、そうだな」
何もない真っ白な空間で、2人のイルギスが対話している。一方は柔らかい雰囲気のイルギスで、もう一方は鋭い目つきのイルギスだ。
「まだ、怒ってるの?ハダル兄。さっき勝手に入れ替わったのは謝るけど、みんなと仲良くしなきゃダメだからさ。ハダル兄はそういうの苦手だし」
「なっ…グリム、そんな生意気な口をきいていいのか?」
「だって本当のことでしょ。」
「………」
どうやら鋭い目つきのイルギスが兄ハダルで、暖かい雰囲気のイルギスが弟グリムのようだ。
「ま、僕たちは二重人格とは少し違うんだよね。二重人格は1つの身体に2つの人格を持つけど、僕たちは2人で1つの身体を共有してるからね」
「ま、そうだな」
こうして、真っ白な空間、すなわち精神世界でこのような会話が繰り広げられていたことは、他の生徒たちにはもちろん知る由もなかった。
「3限目は実技の授業かぁ」
「今日は何やるんだろうね」
女子生徒たちはそんな会話をしている。知識だけでなく技術も身につけるためにこの学校に来ているのだから、実技の授業があってもおかしくない。
「なぁ、イルギスはどの神の恩恵を受けてるんだ?」
ジークがそう尋ねた。
「僕は火の神の恩恵だよ。ジークは?」
「俺は風の神の恩恵だ」
ジークの返答を聞いたイルギス、もといグリムは笑みを浮かべた。
「じゃあ、僕の方が相性がイイね」
「へっ。お前の火なんざ、俺の暴風で消し飛ばしてやるさ」
2人はお互いの目を見て笑っている。
神の恩恵には相性というものがある。例えば、火は木と風に強く、水と土に弱い。といった具合にだ。
「ところで、次の実技の授業って何するの?」
グリムはジークに表情を変えずに尋ねた。
「場所が闘技演習場ってなってたから、試合形式で闘うんじゃないかな」
ジークも負けじとグリムに目を向けたまま、笑みを浮かべながらそう答えた。
「試合形式?」
グリムは疑問に思い、表情を変えて尋ねた。ジークはグリムが表情を変えたのを見て、密かに勝ったと思い、質問に答えた。
「この学校では実戦経験を得るために、試合形式での闘技を行うんだ。ルールは簡単。相手に負けを認めさせるか、一時戦闘不能にさせるか。それ以上の過剰攻撃は反則。あと、立会いの先生が危険と判断したら、その闘技は中断するからな」
「なるほど、面白そうだね」
グリムは再び笑みを浮かべて、そう答えた。
闘技演習場に集まった3-C一同とその担任のジュリアン先生。
「さて、これから授業を始める前に、スクラード君の実力を把握したいので、彼には闘技をしてもらいます。そして相手は…ネハレーラさん、お願いできるかしら」
「はい!」
先生の問いかけに対し、彼女は元気よくそう答えた。クラスはざわめき、グリムは哀れみの目を向けられる。
「よりによって委員長かよ」
ジークがぼやいた。
「強いの?」
グリムは尋ねる。
「この学校では、クラス委員長はそのクラスで前学年末のテストの点数が最も高い生徒がなるんだ」
「つまり?」
「クラス1の手練れって事だ」
グリムはそれを聞いた上で、笑みを浮かべていた。
「つーか、いくら飛び級ったって、この学校の慣例くらい知ってるだろ」
ジークは何で知らなかったんだ?という顔をして尋ねた。
「僕は飛び級じゃなくて編入だよ。飛び級だったら、こんな中途半端な時期にはならないよ」
「いや、編入でもこんな時期じゃないだろ…」
ジークは呆れたような表情をみせた。
「まあいいや。とにかく、委員長は土の神の恩恵を受けている。相性が悪いから気をつけろよ。せいぜい頑張れよ」
ジークはそういって、グリムを鼓舞し、観客席へ向かった。グリムは頷いて応えた。
闘技演習場は直径100メートルの円で、その外側には観客席もあり、下は地面となっている。所謂、コロッセオのようなモノのだ。そこでは2人の少年少女が対面していた。
「改めまして、3-Cのクラス委員長のカユラ・ネハレーラよ。あたしは土の神の恩恵を受けてるの。これからよろしくね」
カユラは明るく自己紹介をした。
「こちらこそ改めまして、僕はイルギス・スクラード。火の神の恩恵を受けているよ。よろしく」
グリムも同様に明るく自己紹介をした。
「二重人格ってのは、本当みたいね…」
最初の自己紹介と比べて、明らかに違う人間に自己紹介されている気分になったのだろう。カユラはそう呟いた。
「何か言ったかい?」
グリムは聞こえなかった訳ではないが、あえて、そう尋ねた。
「いっ、いや…なんでもないよ。ホント、なんでもないから」
グリムはカユラの動揺している様子を見て、笑みを浮かべた。グリムのこういう所は、人の悪さというものを感じさせる。
2人はお互い挨拶を済ませ、所定の位置へ向かった。2人の間の距離は40メートル。それぞれ後方に30メートルずつ距離をとって向かいあう。
「スクラード君、闘技のルールは知ってるかな?」
ジュリアン先生はグリムに、そう尋ねた。
「はい。先程、レイモルド君に聞いたので、心配いりません」
グリムは笑顔で答えた。
「わかったわ。それじゃ始めましょうか」
先生がそう言うと、1人の纏うオーラが明らかに変わった。グリムからカユラの表情までは見えないが、どうやら戦闘モードに切り替わったらしい。
(君の方が二重人格なんじゃないのか?)
グリムは心の中で呟いた。
そして…
「闘技開始!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも、読者様の娯楽に役に立てたなら幸いです。
誤字、脱字、感想等ありましたら、コメントよろしくお願いします。
次話から戦闘シーンが始まりますが、文章での表現が上手くいくか自信がありません。ご了承ください。
それでは、次話の投稿は1月下旬の予定です。
反響が良ければ、投稿ペースをあげるかもしれません。が、期待せずにお願いします。
よろしくお願いします。




