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繰り返し

暗い、暗い。

自分の身体でさえ見えない。


嗚呼、何も思い出せない。


私は私だったのか、俺だったのか、僕だったのか。

わからない。何一つわからない。


ここには、誰かいないのだろうか。



進んでいるのかどうかもわからないまま

感覚だけを頼りに足を動かす。


怖い、怖い。


”人とは暗闇に恐怖を抱くものだ”と誰かが言っていた気がする。


誰かって、誰だろう。


ふらり、と。

あたりを見回せば、先程までなかったはずの

紅い光が浮かんでいた。


走る、走る。


光があるという事は誰かがいるのだろう。


その誰かに私は誰なのかと尋ねてみよう。



光の側には誰かがいた。

顔は闇で見えないが、燃えるように紅いドレスを着ていた。

「こんにちは。どうしたの?」

ドロリとした変わった声だった。

「あの…、ここはどこですか。」


「あら…可哀想に。覚えていないのね。」


「私…。私について何か知っているのですか?

教えて下さい、お願いします!」


「…ええ、いいわ。そうね、特別に…教えてあげる。」

酷く甘い、どろりと溶けたような声でそう言った。



赤だった。

どこまでも赤く、紅く。


確かに”君”がいた。

それは確かに”君”だった。


私が、殺してしまった。


嗚呼…私はどうして。

どうしてあんな事をしたのだろう。





「助けたい?」



甘い声が私の意識を現実へと引き戻した。


「彼を、助けたい?」


甘い、あまい、その声は。

いつの間にか私を蝕んでいた。


頷いてはいけない。

何故かそんな気がした。


”また繰り返すだけだ”と。


そう、思ったような気がした。


「た、すけ…たい」



私の意識はそこで途切れた。

糸が切れたかのように倒れた少女を見て”彼女”は笑った。


「嗚呼、人間って面白いわ。

こんなに無知で、愚かで…

それでいて愛らしい生き物なんて他にいない。」


”彼女”は振り返って、言った。


「ね、貴方もそうは思わない?」

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