月夜の出会い
「そこのキレイな御嬢さん。僕とお話でもいたしませんか?」
月のキレイな夜中、男は佇まいの美しい金髪の女性に話かけた。
それが、すべての始まりだったのだ。
「御嬢さん、名は何とおっしゃるのですか?」
男は、問う。
「私の名前は、アリアよ。アリーと呼んで下さいまし」
アリアと名乗った女性からは、どこかお姫様の様な雰囲気が漂っていた。
「アリー、君はどこかの王女の様なオーラを感じるけれど、そうなのかい?」
アリアは、少しだけ間を置いて答えた。
「そんなこと、なくてよ?貴方は、何とおっしゃるのかしら?」
「僕かい?僕は、トニーと言うんだよ」
と、男は答えた。
「アリー、この辺りには殺人鬼が出るから危険だよ。もし、良ければ僕が君の行く先へお供させてくれないかい?」
アリアは、少し戸惑っている様だ。
「それは、構いませんが、トニーは用事など無いのかしら?」
アリアは、トニーの事を心配していたのだった。
「無いね」
即答だった。
月明かりの下、アリアとトニーの二人は歩き始めた。
どのくらいの時間が経過したであろうか。
トニーは、いきなりアリアに最初から気になっていた事を聞く事にしたのだった。
「アリー?こんな月のキレイな夜中にどこに出かける予定だったんだい?」
そんな何気ない質問だったはずだったのに、アリアは少し顔をしかめて、一瞬の後に何事もなかったかの様な顔で答えた。
「女の人の秘密を暴こうとする、貴方のその行いに私は感心しませんわよ」
と、アリアはトニーを嗜めた。
トニーは、少し驚いて
「ゴメンよ。僕は、君の機嫌を損ねるつもりは無かったんだけれども…」
と、答えた。
アリアには、何かがある様だ。
トニーは、言い表せない不安を感じていた。
(僕の予想が、正しいならアリアはきっと…)
「どうかなされましたか?顔色が優れませんわよ?」
アリアは、トニーを気遣ってそう声をかけたが、それがトニーをなお一層不安にさせた。
トニーは、無意識のうちに後ずさっていた。
しかし、アリアはそれを見逃してはいなかった。
「どうかされました?」
そう言うアリアの目は獲物を見つけて狙い撃ちした状態であった。
しかも、その手には白刃煌めくナイフが握られていた。
「う…そ…だろ…」
それが、トニーの最期の言葉であった。
アリアのナイフには、月明かりで妖しく輝く赤色の液体がべっとりと付いている。
「アハハ…。貴方は、アッサリ終わってしまいましたわね…。一度前は、少しは楽しめましたのに…」
アリアは、満たされ無かった様な顔でその場を去って行った。
彼女を満たすのは、誰なのか?
あるいは、何であろうか?
それは、誰にも分からない問いであるーーーー
とある曲を聴いて、思いついたので執筆致しました、神威 龍弥です。
短編集は、こんな感じでいきたいと思っておりますのでお付き合い頂ける方はよろしくお願いします。