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お空の石

 無くした物はなんなのか聞きに来たのに、探し物が増えてしまいました。でも女の子は


「はい。いっしょに探してみます」


 と力強く答えるのでした。



「遅くなったけど、紹介するよ。この人は父神様ちちがみさまで、この人は母神様ははがみさま。ぼくのお父さんとお母さんだよ。ぼくの事は子ども神と呼んで下さい」


 子ども神は明るい声で両親を紹介しました。さっきまでの不安気な様子はありません。女の子はあわてて初めまして、とペコリと頭を下げました。


「こっちへおいでよ。いい物を見せてあげる」


 子ども神が女の子の手を引きます。二人は宮殿きゅうでんの中に入って行きました。この空の宮殿には子どもが一人しかいません。子ども神は、同年代の子どもに出会えた事が嬉しくて仕方なかったのでしょう。その姿を父神様と母神様はほほ笑ましく見送りました。


 二人は大きな宮殿きゅうでんの広間を通り抜け、階段を上り長い廊下を進みます。女の子は突き当たりの角部屋かどべやに案内されました。


「ここは、ぼくの仕事部屋なんだよ」


 と、子ども神は女の子を部屋の中に招き入れました。


「仕事部屋? まだ子どもなのに仕事をしているの?」


 子ども神は、女の子と同じとしに見えました。それなのに仕事をしているなんてすごいと女の子は思いました。


「ぼくは子どもだけど神様の一員だから、君の住む地域のお空の管理をしているんだよ。ほら見てごらん」


 真っ白い部屋の真ん中に透明の箱がありました。その中に色とりどりの石が入っていました。水色。青色。オレンジ色。たくさんの色の石があります。


「これはね、空の石なんだよ。これは秋の空の色」


 と、澄んだ青色の石を指差しました。次に薄い水色の石を指差します。


「これは朝の空の色。これは夕暮れの空の色」


 と次に燃えるようなオレンジ色の石を指差しました。それから空の石がたくさん入っている箱の上の、丸い透明のボールの中にある紺色の石を指差し


「これは夜空の群青色」


「ぐんじょう色?」


 初めて聞く色の名前に、女の子は首をかしげました。


「そう、群青色。空がこの色に染まると星たちがキラキラと輝き出すんだよ」


 とニコニコしながら言いました。それから、空の色は単純では無いので石を二個、三個と組み合わせて色を作り出すのだと教えてくれました。


「この透明のボールの中にある石が今の空の色だよ。今は夜だからこの石が入ってるんだ。空の石を入れ替えるのがぼくの仕事なんだよ」


 と、子ども神は満足気に説明を終えました。女の子は口をとがらせます。


「子ども神様が泣いてばかりいるから、お星さまは見えないのよね」


「あ……。ごめんなさい」


 子ども神は頭をかきながら、照れ臭そうにそう言いました。女の子はあわてて首を横に振りました。そしてごまかすようにカラフルな石を指差してこの石はなぁに? と聞きました。


「これはね虹の石。雨上がりに使うんだよ」


「ふ~ん、そうなんだぁ。とってもきれいだね。でも雨のたびに泣くのは大変だね」


 と言う女の子に


「あはは。雨の石もあるんだよ。でもねぼくが泣くと、空の石関係なく雨が降っちゃうんだ……本当にごめんね」


 女の子は又、顔をブンブンと横に振りました。そして箱の中をじっと見つめました。


「えっとね、空の石が入ってるはこの中に、空いてる所が二つあるよ?」


 空の石は、透明の箱の中にしかれたやわらかな布の上に置かれていました。空いた場所にくぼみが二つあったので、女の子は不思議に思ったのでした。


 女の子に言われ、子ども神も箱の中をじっと見つめてみました。そしてハッとしました。


「そうだ、思い出した。大事な石を無くしたんだ!」


 子ども神は、そう叫びました。


「それは、どんな石なの?」


「えっとね。親指ぐらいの大きさで、玉虫色をして光の加減で色が変わる不思議な石だよ。おじいさん神様にもらった、とてもきれいな石なんだよ」


 女の子に聞かれ、子ども神はそう答えました。ここにある空の石は、どれも子どもの手のひらにはおさまりきれないくらいの大きさでした。親指の大きさと言うことは、それよりも小さい石なのでしょう。



「じゃあその石を無くして子ども神様は泣いていたの?」


 女の子にそう聞かれ、子ども神は「たぶん」と答えました。


「じゃあ、その石を見つけたら子ども神様は笑ってくれるのね?」


 子ども神は出会った時は泣いていたけれど、それから後はときおり心細い顔をするだけで、一度も涙を見せませんでした。でも、女の子は泣いている神様を笑顔にするためにこの世界に来たわけですから、たしかめずにはいられませんでした。女の子の問いに子ども神は「うん」と大きくうなずきました。



 さっそく二人は部屋の中を探し始めました。真っ白な中に、いくら小さくても玉虫色に輝く石が落ちていたら嫌でも目につくはずです。


「この部屋には無いって事だね」


「そうだね……」


 たくさん置いてあるクッションを、一つづつ持ち上げ確認しました。そして最後の一個を持ち上げ、二人はガックリと肩を落としたのでした。








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